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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)カンフーじいちゃん


一昔前、地元の踏切にカンフーじいちゃんと呼ばれていた名物じいさんがいた

そのじいさんは毎日踏切で停車した車に向かって謎のカンフー指導をしていたのだが

歩行者に迷惑をかける訳でもなかった為黙認されている存在だったらしい


ある日そのじいさんが車と衝突して死んだらしいとの噂が回ってきた

ネタ元に真贋を問うと彼の下の弟が現場に居合わせたらしい


当時流行ったムエタイアクション映画を見た小学生にカンフーをなじられたらしく

じいさんは自己の証明の為に徐行中の車に飛び込み轢かれたとの事

大量の出血だった為あれじゃ死んじゃったよ、と聞いての話だったのだが


それから3日も経たずに熱血カンフー指導を行うじいさんを見かけた

腕と頭に包帯、首にはコルセットしていたけど寝間着のままで多分病院から脱走してる


事故の後、流石に危ないと近隣住民からのクレームがあったのかじいさんは現れなくなったが

最近母が始めた太極拳の動きがカンフーじいちゃんそのものだった

ちゃんと教えてたんかい!

と二度びっくり


ん?カンフーちゃうやんけ

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