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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)飛び降り


通っていた高校は季節ともなれば花見客で賑わう地元では有名な山の麓にある


生徒数や学科が増えるに従い増設したのか校舎だけでも数棟あり、移動するにも結構な労力を要する学校だった


高校二年の終業式の日、俺は地元の同級生と約束がありHRもソコソコに校舎を飛び出した


ところが別棟の商業科の様子がおかしい、かなりの人数が坂の下にある新館の方を注視している


何事かと振り向いてみるとその新館に続く坂道に変な方向に足が曲がった生徒が横たわっていた

初めは何故倒れているのか分からなかったが足の様子や坂道に伝う血の色で新館から飛び降りたのはすぐに理解出来た


身近にいた商業科の友人に事情を聞くとどうやら商業科の二年生でその日の朝、チャリ泥をして捕まったらしい


自分も経験があるのだがこの学校は生徒が問題を起こすと即退学を勧めてくる、というか親も呼び出し


精神的に追い詰めるだけ追い詰めて自主的に辞めざるを得ない状況にする


その生徒もどうやらその陰湿なやり口に失望し、詰問を受けていた新館の5階辺りから飛び降りたそうだ


普通なら即死レベルの高さだが運の悪い事に窓からせり出した日差しに体が当たり、回転しながら足から着地したらしい


俺が居合わせた時にはまだその生徒は存命していたが状況から見ても瀕死レベルで助かる望みは薄かった


同じ商業科の生徒達は悲しみの余り泣き出す女生徒やざわつく生徒達で半ばパニック状態

駆けつけた保険医もどうにも出来ず生徒に毛布をかけ、救急車の到着を待つしかなかった


当時、結構な話題となりマスコミも駆けつけ一週間程は大騒ぎだったが学校側の情報操作が功を奏したのか


詰問した先生が処罰される訳でもなく死んだ生徒の罪を悔いた上での衝動的自殺として処理されたらしい


その後、その現場付近や飛び降りた新館では死んだ生徒の霊を見た!等の噂話がまことしやかに流れたが

誰も噂しない場所で一度だけ彼らしき人を見かけた事がある


それは飛び降りた新館でもその付近でもなく、その坂道の下にある自転車置き場


夕暮れ時の自転車も疎らになった駐輪場の片隅でソコに置いてあっただろう自転車を物言わず見つめていた


たかが、と言っては語弊があるがチャリ泥は命を落とす程の事案だったのだろうか?


彼の人生を閉じさせた原因を作った先生達はそこまで追い込む事が果たして正義だったのだろうか?


と今も思う

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