(霊)火傷の痕
いつもはバイクで通勤していたが故障で仕方なくバスに乗り込んだ
その日は小雨が降っていて車内が混みあっていたせいか湿気でムンムンしていた
駅前のバス停で結構な人が乗り込んできて軽い寿司詰め状態になり滅入っていると
目の前で座っている女性のうなじが目に留まった
彼女は居眠りをしているのか俯いて揺られていたのだがうなじから火傷の痕があった
気まずいやら気になるわで心の中で葛藤があり、車窓から見える景色に目を移した
何ヵ所かのバス停を過ぎ車内も結構空いて来たので移動して座席に座ると
急な眠気に襲われて気を失う様に寝てしまっていた
どの位経ったろうか?
ふと目が覚めて辺りを見回すと人も疎らになっていた
と、正面から誰かの視線が刺さっている
「ねぇ、さっき私の火傷の痕見てたでしょ?」
え???
さっきの女性が何故か俺の座席の前に移動してこっちに話しかけてきた
状況が飲み込めずおどおどしていると「フフッ…」と笑って元いた辺りに戻って行った
ハッ‼っと目を覚ますとバスは相変わらず走っていた
夢か、夢だったんだ…
リアル過ぎて夢であった事に感謝しているとあの女性がこっちをジッと見ているのに気付いた
慌てて寝たフリをしてその場をやり過ごしたのだが最寄りのバス停を遥かに乗り越してしまった
駅名がつくバス停で下車するとバスはゆっくりと発車した
思わず車内を見てみるとあの女性の姿はどこにも見えなかった




