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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)釣りが好きだった

これは鮎釣りを趣味とする友人から聞いた話


ウチの近所を流れる川には時期ともなると鮎釣りを楽しむ釣人が竿を投げている光景を見掛ける

俺は釣りに興味がないので良く分からないが彼らは腰まで履くタイプの長靴?を着用し、川の中で竿を投げているので目立つと言えば目立つ


俺からするとそんな大変な思いしてまで釣りたいかなぁ…とは思うが彼らにしてみればそれもまた一興なのだろう


また鮎釣りが見れる季節になったな、と釣り好きの友人に話すとこんな話をしてくれた


彼がその人と出会ったのは川の中だったと言う

少し離れた所で釣竿を投げる者同士、最初は会話もなかったが偶然にも同じ場所に車を停めていたせいで帰り支度で会話を交わす様になる

それが数回続きその人と飲みに行く迄仲が深まったそうだ


友人の話ではその人は定年退職後、忙しくて出来なかった鮎釣りを趣味として楽しむ様になったそうで

友人が丁度独立した息子の年齢に近かったのもあって身勝手ながら我が子と一緒に釣りに興じている気分になっていたそうだ


それから数年、友人とその人は川で顔を合わせれば帰りに食事や飲みに行く様になりお互いの家に行く迄になったそうだ


ところがある年を境にその人の姿を見掛けなくなった

心配した友人が連絡を取っても繋がらず心配をしていた矢先

いつも行く川の上流でその人らしい姿を目撃する


ずっと音信不通だったその人に会えた喜びもあり友人は早目に釣りを切り上げて車に戻ってその人が上がってくるのを待ったのだが日が暮れても上がって来ない

不思議に思った友人が川の方に見に行くとその人らしい姿は既に川の中にはいなかったそうだ


いよいよ不安に思った友人は意を決してその人の家を訪れてみる事にした

家には彼の奥さんがいて久しぶりにやって来た友人を中に招き入れてくれた


ソコで友人はその人の死を初めて聞かされた

胃がんを患って気付いた時には手遅れだったそうだ


友人は奥さんに先日見た幻?の話をすると涙混じりに話してくれたそうだ

旦那さんは友人と釣りの場で会うのを何よりも楽しみにしていたそうで自分が病に侵された事も友人には内緒にして欲しいと懇願していたそうだ


いつか元気になって友人とまた釣りを…

この一念で頑張っていたがとうとう逝ってしまったそうだ


その人はまた俺と釣りをしたかったのかな…


友人がしんみりと話す内容に俺達はもう一杯ビールを頼んでその人に献杯した


残念な事に釣りが嫌いな俺はその後友人と連れ立って鮎釣りをする美談には出来なかった

本日はここで終了します。

この奇憚雑記は体験談を思い起こして投稿しておりますので不定期になる事はご了承下さると助かりますです…はい。

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