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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(噂)疑心暗鬼

これは大分前に聞いた先輩の話


昔、地元のヤンチャな連中が徒党を組んで夜な夜な珍走行為をしていたそうな。


そのグループはその内地域の暴走族と合流し、組織の一員として更にヤンチャを極めていく

珍走行為に加え上部組織に毎月ある程度の金額を納めるノルマを達成する為に窃盗まで始める


そんなある日、彼らはとある運送会社の事務所に狙いをつけ侵入を計画する

実行した彼らの仲間はその日を境に姿を見せなくなった


仲間が姿を消した事を不審に思った残りの面子は手掛かりでもあるその運送会社の事務所に侵入して行方を探そうとしたが

幾ら中を探しても何の手掛かりも掴めず事務所を後にした


少しして行方不明になった仲間の親が流石に家に帰って来ない放蕩息子を案じて警察に相談した

警察は補導歴などから残りの面子に辿り着き事情を聞き、例の事務所の一件を知ったそうだ


警察から見たら運送会社は被害者、窃盗目的で侵入した悪ガキの行方を詰問する訳にもいかず

会社の社長に何か変わった事はなかったか?と聞いても首を横に振られるだけで手掛かりなしだったそうだ


それから一年だか二年が過ぎて関係者以外行方不明になった悪ガキ達の事を騒がなくなった頃

行方不明になっていた悪ガキの1人が杖をついて姿を現した


突然戻って来た放蕩息子に親は今まで何処にいたのか?と問い質すがそれまでの敵対心丸出しの態度だった息子はただ首を振るだけで何も答えない


仲間の帰宅に昔の仲間達も次々にやって来ては他の仲間の行方を尋ねるがやはり答えない


結局帰ってきた悪ガキは精神を病んだとかでその内に病院に入れられてしまったそうだ


それから暫くして運送会社が摘発された

何でも反社組織と組んで違法な人身斡旋を行っていたとかで従業員に借金を背負わせ首が回らなくなった所でタコ部屋という不法労働系のヤバい場所に送り込んでいたそうだ


何処かの土木事務所から脱走してきた被害者の通報で露呈したその事件で行方不明になっていたかつての悪ガキの数人は発見されたが保護された被害者達は報復を恐れたのか殆ど事実を語る者もなく事件はその内鎮火してしまった


結局見つからなかった仲間の行方も被害者の数少ない証言から得られた消えた別の被害者達の行方も不明のままだったそうだ


噂では過酷な労働状況に耐えられず死んで極秘裏に処理された、とか何処かに運ばれて内臓を抜き取られた、とか流れたがその真実は闇のままだ


ーーー


「と言う事件があったんだが…他の噂もあってな…」


先輩が聞かせてくれたその噂は一瞬そんなバカな?と思う話だった


ヤンチャする息子達の処遇に困っていた親達が運送会社に頼んで「連れて行って」貰った、と言うのだ


噂は噂、どれが本当なのか、どれも嘘なのかも分からない

ただの噂だが聞いた俺はその話の登場人物の中で一体誰が被害者なのか、分からなくなってしまった


因みにその事件、何かの圧力がかかったのか結構な広域事件だったにも関わらず地元では地方紙の隅にちょこっと載った程度で騒がれなかったそうだ

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