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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(怖)側溝

俺の友人から聞いた話


友人の実家は周りが田んぼに囲まれた長閑な場所だ

田んぼの中にポツリポツリと家がありお隣さんと言っても最低50mは離れている、そんな田舎町


当然そんな場所だから事件とかも起こらないのだがその付近では毎年何人かの人が亡くなっている


その理由は「川流れ」と言って要は田んぼの脇を流れる用水路に何らかの事情で落ちたお年寄りとかがそのまま溺れて亡くなってしまうそうだ


俺も友人にかり出されて田植えの手伝いをした事があるが田植え時期の用水路の流れは水量が半端じゃなくて確かに大人でも容易に流されてしまう程の流量だった


友人が小学生の頃、小学校で催された盆踊りに出かけようと兄弟と共に学校に向かったそうだ


田んぼだらけの田舎道、街灯なんか殆どなく日が落ちて直ぐの薄暗い所をワイワイ言いながら歩いていく


家から出て数分後、友人のお兄ちゃんが


「この水の音、変じゃね?」


と騒ぎだした


言われてみれば普段なら水の流れる音が滔々と聞こえるだけなのに今日に限って何処かに当たって激しい音が混じっている


ただ親達からは用水路に近付くな!と口酸っぱく言われていたので脇の用水路には近付けない


いつもと違う激しい水の音に首を傾げながらとりあえず学校に向かうとその先で水音の原因が判明した


最初は道路にまで溢れた水が水溜まりを作っているのに友人が気付き、その原因は何だ?と用水路を見たお兄ちゃんが悲鳴をあげたのだ


「ひ、人が落ちてる!」


お兄ちゃんの指さす先には用水路の側溝に落ちて嵌まってしまったのであろう、大人がうつ伏せで倒れていたそうだ


用水路は大人が塞ぐ形で水を溢れさせどんどん周囲を水びたしにしていく


子供達では勿論助ける事も持ち上げる事も出来ないのは分かっている


そこで友人達は急いで家に戻ってその状況を親達に話す事にした


途中、こっちの方が早いかとご近所さんの家に飛び込んで事情を話すとおじいちゃんが飛び出してきて案内を頼まれた


友人達はおじいちゃんを問題の場所に誘導していくがおじいちゃんの歩くスピードが遅くてジリジリする


急いで!急いで!とおじいちゃんを急かしながら漸く辿り着いたその現場には既に倒れた大人の姿は見えなかった


「こりゃ流されたな、大変だ!」


とおじいちゃんは慌てて周囲の人に連絡をして捜索する事に


結局その日は盆踊りも途中で中止され捜索隊が編成されたが何処にも見つからなかったそうだ


翌日、用水路の下流にある水門で溺死体が発見されたらしい


その話を田植えの手伝いの合間に聞かされたが最初は「まさかぁ」と信じられなかった


「じゃあ試しに側溝に座ってみな?」


と言われ半信半疑で側溝の中に座ってみたら85kg位の俺がまるでウォータースライダーに乗ったみたいに流された


子供の頃は側溝内に座ってスライダー遊びをしていたそうだと聞いてそりゃ危ないわ、と突っ込んだ


友人の実家の周りでは未だに毎年川流れで亡くなる人が後を絶たない

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