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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(謎)レッカーの手伝い

俺の同級生に車の修理工場をやっている奴がいて時々ダベりにそいつの店に顔を出す


ある冬の日、彼の顧客から「山でスリップして滑落した」と連絡があった


事故の場合警察を呼ぶのは当然としてレッカーを呼ぶ際は加入している保険屋の指示に従って車両の引き上げをするのが普通なのだが


その客の加入していた保険屋はあまり評判の良くない保険屋で案の定レッカーを呼ぶのも別料金、しかも県外から派遣するとか言ってるらしく困って友人の店にSOSを入れたとの事だった


滑落と言っても酷い状況だとローダーでは無理なので友人は客に状況を聞くとちょっと脱輪に毛が生えた程度だと言うので


興味本位で俺もレスキューの真似事に付き合う事にした


客に聞いた事故現場はこんな雪なのに何故入った?という程の旧道で対向車が来たら非難帯を使わないとすれ違えない程の細道で


俺達は不思議がりながらも山道を登り始めた


最初は民間もまばらにあり道路も多少圧雪されているが次第に道は雪深くなっていく


ローダーのタイヤも微妙に噛まなくなりつつも指示された現場近くに何とか辿り着く


だが何処を見てもそれらしい車も人影も見えない

結局俺達は四苦八苦しながら山道の反対側迄探し続け折り返して戻る事になった


あまり時間をかけると日が落ちてレッカーどころではなくなってしまう


俺達は徐行しながら左右をじっくり探していく


すると客が指示した近くでうっすらと残るスリップマークを発見、俺達はローダーを停車してそのスリップマークの先に歩いて行った


スリップマークの先はガードレールもない崖で大体5m下に連絡してきた客の車が刺さっている


「…こりゃ警察と救急車だな」


車の状況から客は車から脱出した形跡もなくローダーで引き上げる事も叶わない


俺は警察と救急車を呼んで彼らの到着を待った


レスキューも来て救助活動が始まり俺達は事情を警察官に教えている


「救助者発見!」みたいな声が崖下から聞こえて慌ただしくなったがどうやら客は亡くなっていたらしい


結局このままいても邪魔になるので連絡先を聞かれてその場を離れたのは夕飯時を過ぎてからだった


後日友人は再び事情を説明しに警察を訪れたらしいがそこで微妙な結果を聞いてしまった


連絡をしてきた客は友人の店に連絡をしてくる「前日」にはあの道で滑落し、絶命していたそうだ


死因は心筋梗塞だか心疾患だかは覚えていないが飲酒運転中に心臓が止まりそのまま崖下へ落ちたそうだ


なら何故電話が?と友人も思ったが死因に事件性もない事からベテランの警察官に「時たまこんな不思議な事もあるんだよ」と諭され帰って来たらしい


携帯なら着信が残るのに店にかかって来たので履歴もなく事件性もないからそのまま終わったらしいが


後日その件の顛末を聞きに出向いた俺と友人はお互いモヤモヤしながらその日を終えたのだった

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