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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)霊能者バトル?


これは一昔前、夜の飲み屋で起こった笑い話の様で後味が悪い話


若い時分、東京で一人暮らしをしていた時にパチンコ屋でバイトをしていた事がある


ソコは以前二子山部屋があった中野新橋の駅近で結構大きかったせいか芸能人や芸人さん、部屋住みの力士さん達も結構打ちに来ていて仲良くさせて貰っていた


ある時期から芸人さんと懇意にさせて貰って毎日バイトが終わると彼らの飲んでいる酒場に駆けつけ奢って貰う様になった


そんなある日、芸人さん達の中に数名見慣れない人達が混じっているのに気付いて挨拶したのだが

芸人さん達の話では心霊スポット突撃ロケみたいなモノがあって仲良くなった霊能者の方々を今日誘ってみた、と言われた


初めて生で見る霊能者の方々に興味津々で質問したり体験談を聞いたりして場が異常な盛り上がりを見せたが酒が進むにつれて芸人さん達の無茶振りが次第に度を越えて来た気がした


「○○さーん、今霊呼んでよー」

「今から○山墓地行って突撃レポしましょうか」


等と霊能者の方が苦笑するレベルだったのだが誰が言い出したのかは分からないがある一言でその場の空気が一変した


「皆さん結局誰が一番視えるんすか?」


正確には思い出せないが内容はこんな感じだったと思う


普段であれば気にも留めないだろうその言葉を場に来ていた霊能者の数名が酔った勢いなのか真正面から受けて立ったのだ


初めその場にいた霊能者の方々は5名、話に乗ったのは3名、実際腕(?)比べまで乗ったのは2名だった


この霊能者バトル?が始まる前に最初に乗らなかった2人はちょっと機嫌を損ねて帰っている

最後に止めた1人も帰ろうとしたが審判がいないと視えない俺達じゃ分からないという事で無理矢理残って貰った


こうして場が整ったものの何を基準に競うのか、酔った芸人さん達では思い付かない

審判役をしてくれた霊能者の人が


「それなら今から外に出てどれだけ霊が視えるか?を競いましょうか」


と提案したので皆がそれに同意した


総勢10名程で店を出たが場所も決めていなかったので店の前でどうする?とざわついていると


「霊はちょっと歩けば何処にでもいるから」


と言う言葉で全員で少し歩く事に


結局辿り着いたのは飲み屋から少し離れたごく普通の交差点だった


「いるね」「いますね」


と霊能者の方々が口々に話すその交差点の角には確かに若い女性の霊が道路をずっとうつむき加減で眺めていた


店の中で話しあっていたが霊能者が霊を視るのは「当たり前」、そこから何処まで「視える」かが能力差なのだそうだ


これには俺もなるほど、と納得した

ただ霊が視える素人の俺とは違い彼らはその霊が訴えてる事を読み解く事がある意味生業だから(?)だ


競いあう2人と審判役の1人がジッと女性の霊を見つめ続ける


俺はともかく芸人さん達は5分もしない内に飽きてしまった様だ

ただ言い出しっぺである手前、飽きたから止めようとも言えず我慢していた様だが

10分程すると3人とも納得がいく霊視が出来た様で答え合わせの段落になった


流石に深夜の道端で騒ぐのは迷惑なのでたまたま近くにあった九州料理を出す小料理屋で行う事にした


その小料理屋は俺や芸人さんの何人かが懇意にしていたので急な来訪も快く迎え入れてくれたのだ


「じゃあ先ずは私から…」


と始まった答え合わせはカンニング(?)を防ぐ意味で競う2人を別々に個室に呼び出して行われた


1人目の霊視は「20代の女性、さっきの交差点で自転車事故で他界している、服装は…」とかなり細かく驚いたのは彼女の親の状況や心残り等も触れていた


2人目の霊視は先程の話に比べると曖昧な部分が多く親の状況や細かい部分が物足りない感じに


とは言っても正解が分からない芸人さん達は頼みの綱である審判役の霊能者を残してどっちが正しいのか聞いてみる事にした


まぁ結果は聞く迄もなかったが1人目の霊能者さんが勝った(?)と言われ皆もやっぱりな、という感じで幕を閉じた


結果は2人に言うと流石に営業(?)に障るので「双方とも凄くて甲乙つけがたかった」という何ともモヤモヤするドローにする事にしたのだが何となく勝敗は感じ取れてしまった様だった


元々が無茶振りだったので芸人さん達も霊能者さん達を労い改めて飲み直し、となったのだがその途中で2人目(負けた方)の様子が次第におかしくなっていった


芸人さん達が場を盛り上げている最中、俯いて何かブツブツ言ってフフッ、と笑っている


それが気になったのか残りの霊能者さん達が何か不安気に背中を擦ったりしている


盛り上がっていた芸人さん達も次第に霊能者さん達の異様な雰囲気に気付いて静かになっていく


「あの…大丈夫なんすか?」


その場で一番の先輩芸人さんが心配して声を掛けて直ぐにその場の空気が凍り付いた


「クフフ…」


最初はこんな感じだったと思う


突然2人目の霊能者さんが笑い出したと思ったら目の前のテーブルを蹴り倒す勢いで痙攣し始めたのだ


慌てる他の霊能者さん達、バニくる俺達、救急車を呼ぶ女将さん、店内は大騒ぎになってしまった


結局救急車で霊能者さん達は付き添って残された芸人さん達と俺は気まずいまま現地解散をしてその日が終わった


後日、芸人さんに誘われて合流した飲み屋であの2人目の霊能者さんは気が触れてしまったと聞かされた


あの競いあいが原因だったのかは分からないがその後あの霊能者さん達とは2度と会う事はなかった


何とも後味の悪い出来事だった

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