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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(謎)イマジナリーフレンド?


俺が小学校高学年に上がると両親は手習い事を俺の意思とは関係なく押し付けて来た


手習いと言っても習字、算盤等当時の子供達が良く習っていた範囲なのだが


やりたくて通っている訳ではない以上、俺は浅知恵を駆使してサボり捲った


最後にはあまりの悪戯ぶりに塾側から出禁にされる程の悪童?だったのだがこれはその時の話


塾に行くと俺と似た様な悪ガキが2人いてつるんでは悪さばかりしていた


先生が来る前に半紙を全て隠したり教材を隠したり諸々と…


今考えるとバカらしいし営業妨害だし塾に通う他の子達にも迷惑だしそんな事する位なら初めから塾に来なければ良いのに、と理解出来るのだが

当時は何故か行かないという選択肢が抜け落ちていた


塾を追い出される直接の原因となったあの日、俺達3人は教室の裏にある備品庫で大量のチョークを発見した


最初は色んな所に落書きしていた様な記憶があるが途中から何故か「曇りガラスでチョークを削って粉にする」という作業に没頭していた


削った粉は丁寧に集めて近くにあった駄菓子からガチャガチャのケースを寄せ集め中に詰めていく


それらを何を思ったのか建物の屋根によじ登りやって来た塾生達に「爆弾だー」と言って地面に向けて煙幕代わりに投げていたのだ


そうこうしている内に先生がやって来てこっぴどく叱られ更には「もう来なくて良い!」と言う落伍者認定をされたのだった


まぁここまでは悪行の報いとして当然然るべき処置だと思うのだが問題は一緒に悪戯をしていた仲間達の事だ


俺の記憶では○田と横○という友達と一緒にはっちゃけていたのだが

大人になって○田とこの話をした時に記憶の齟齬が発生したのだ


○田曰く「俺と○(俺)の2人だけだったじゃん!」という事なのだが

○井も一緒になって暴れていた、と俺は記憶しているのだが「お前は昔から物覚えが悪いから何かと記憶が混同してるんじゃないのか?」と全く取り合ってくれなかった


あれだけ3人で遊んだ友人を片方が覚えていて片方が忘れる事などあり得ない


散々2人で言い合って結局「じゃあ学校で確かめよう!」と言う事になった


幸いというか同級生の1人が母校の教員として働いているのを知っていた俺達は後日その友人を頼って生徒名簿を閲覧させて貰う事にしたのだ


結果…


○井という少年は同じ学年にも上下にもいなかった

他の学区から…とも思ったが当時はあちこちに塾があり余程の事情がない限りわざわざ他の学区から通うという事はなかった


うーん…と俺が諦め悪く唸っていると名簿を見せてくれた同級生が何を調べてんだ?と聞いて来た


○田が事のあらましを話すと「あー、懐かしいな。お前ら2人、先生にぶん殴られてたよなぁ」と思い出を語りだした


その教員になった同級生もその塾に通っていて件の事件の目撃者だったそうだ


これであの日暴れていたのは2人、○井という奴はいなかったって事が確定したのだった


それから暫くして○田の父親が他界した

葬儀に参列した俺は通夜の席で気落ちしている母親を慰める為に同席して昔話をしていたのだが


「そう言えばアンタ(○田の事)、小さい頃見えない友達と良く遊んでたわよねぇ…」


と爆弾発言を繰り出して来たのだ


○田の母親の話によると店が忙しい両親の代わりなのか○田はいつの間にか○井という(見えない友達)と遊びだしてそれを聞いた両親は我が子の精神を案じたらしい


その内連れて来た生身の友達(俺)が「○井と3人で遊んでいる」と話してくれて内心ホッとしたそうだ


そう、○井はどうやら俺の妄想ではなく○田の心が産み出した(?)イマジナリーフレンドらしいのだという事が判明した


当の本人は途中で出来た実の兄弟の為にすっかり忘れていたらしい


じゃあ何でその架空の人物が俺に見えていたのか?と聞かれるとその理由はさっぱり分からない


ともかく俺にとってはほろ苦くも楽しい記憶なので本当にいたかいなかったのかはどっちでも良いだろう

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