(人)忘れられてた友人
皆さんの周りにも存在感というか影が薄い人、と言われれば思い当たる存在がいるのではないだろうか?
この話はそんなある友人の話
俺の小学校時代からの友人に「影の薄いヤツ(A)」がいた
普段から温厚で大人しく、自己主張をしない性格からなのか皆で遊びに出かけてもいたのかいなかったのか後から思い出すと微妙に思い出せない位影が薄かった
ある日友人達10人程で山にキャンプしに行こう!と言う話が持ち上がり子供達だけではダメ、と言う事で親数人が引率という形で企画が通った
夏休み終盤、俺達は親達の引率で近くの山に出かけた
車で行けばそんなに手間は掛からないが折角のキャンプなので皆リュックに荷物を詰め込んでテント等の大物は親に頼んで徒歩でのスタートだった
一応参加人数が親を含めると15人程になるのではぐれない様に場所場所で点呼を取りながらキャンプ予定地迄歩いていく
途中何回か休憩を挟みつつ目的地に着いたのは午後3時頃だったろうか?
それから先行して準備してくれていた親達に混じって教わりながらテントや夕飯作りに勤しんだ
1日目はテント設営や夕飯作りに手間取って食べたら即爆睡したが2日目は釣りをしたり探検したりと充実したキャンプだった
もう一泊して3日目の朝、荷物を片付けて下山する
帰りは友人の親の何人かがキャンプ場所迄迎えに来て数人減ったが他は徒歩で下山を希望して時間は掛かったが皆無事降りる事が出来た
先に帰ってしまった友人達は別として徒歩で下山した俺達は出発した公園に戻ってそこで解散となる
公園には俺達の親も出迎えてくれていて和気あいあいとした中で最後の点呼となった
引率してくれた親達が名前を呼んで俺達がそれに応える
それが終わったら解散、となる筈だったのにそこで問題が発生した
「A君ー!A君はいるかぁ?」
学校行事ではないので僅かながらも待っていた親元に寄って行った子供もいるのでうまく点呼が出来ないらしく引率の親達がAの名前を何回も呼んでいる
Aの親も我が子の姿をキョロキョロと見回していたので親元には戻っていなかったらしい
結局公園にAの姿はなくもしかすると先に車で下山した子供達の中に紛れて先に帰ってしまったのか?と言う話になった
引率の親達が電話で確認を取ってみるとそこにもAはいない
じゃあ何処で?という事になり一気に親達が慌ただしくなった
俺達は邪魔になるので先に帰らされ引率をした親達と他の親達とで手分けして捜索に当たった
深夜になりかけで帰ってきた俺の親にAは見つかったのかを訊ねるとどうやら山道の途中で見つかったらしい
後日Aの話を聞いてみるとどうやら3日目の最初の休憩でトイレに行った彼は戻ってみたら俺達がいない事に気付いたそうだ
置いてきぼりを食らって動揺したのかAは途中で道を間違えて別の場所に下山してしまう
あからさまに到着した場所が出発した場所と違うのに気付いたAは再び来た道を戻り分岐点迄戻って下山し直した所捜索しにやって来た親達に発見されたそうだ
Aも叱られたが引率の親達も確認を良くしなかったせいだ、と何度も謝ってお互い謝罪合戦みたいになってしまったそうだがAが無事だった事もありその場は収まったらしい
俺達は引率した親達が事ある毎に点呼をして欠けがないかを確認していたのを良く知っていた
それを掻い潜り置いてきぼりされるとは流石A!という事になりその後Aのあだ名は「忍者君」「忍君」とかになっていった
それにしても影が薄すぎてはぐれてるのに気付かれないとは…今考えると凄い話だ
因みに現在Aは電気工の自営業で生計を立てていて流石に忘れられてる、とかはない




