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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)案山子


まだ車載ナビが普及していなかった頃、見知らぬ土地に行く時は地図を見ながら移動するのは当たり前の事だった


地図を携行しているのならそれを参考に道を選択すれば済むのだが携行していなかったり地図のエリア外だったりすると道行く人に道を訊ねたりするのは当然の事だったのだ


ある日、友人達と県外に遊びに行く事になり友人の車に野郎数人で乗り込んだ

いざ出発したのは良いが全員目的地迄の土地勘がゼロなのが出てから判明し、まぁ国道とかにある案内板を見ながら行けば何とかなるんじゃないか?と安直な気持ちでそのままドライブは続行された


道中友人が珍しい施設の案内板を見かけてソコに急遽立ち寄る事になったのだが

それがドツボにハマる前兆でどこで案内板を見落としたのか、途中でプチ迷子になってしまった


こうなると一旦分かる箇所迄戻るか道行く人を見つけて道順を尋ねるしか方法はなくなる


迷った事に気付いた時には既に周囲が閑散としていて周りは見渡す限り田んぼや畑しかなくて俺達は暫くだらだらと進むしかなかった


そんな時、畑の中で野良仕事をしている人影を見つけたので俺は運転手に車を停める様に指示して車を降りた


「すいませーん‼」「…」

「あのー、すいませーん‼」「…」


俺が畑の中で背中を向けてしゃがみこんでいるおばちゃんに何度も声を掛けていたが聞こえないのか全く気付く気配がない


(耳が遠くなっちゃってるのか?)


と何気に後ろで俺を待っている友人達の方を振り向いたら友人達は大爆笑していた


「何だよ?」


俺が皆の為に必死で道を訊こうとしているのに爆笑するとか何だコイツ等?

とムカつき気味に車に戻ったら友人達は更に大爆笑している


「○○(俺)ー、何案山子に道訊いてんだよー‼」

「人と案山子見間違う迄は分かるけど更に声掛けてる奴なんて見た事ねぇよ」


等とすっとんきょうな笑いが起きている


(えっ?)と思って畑の中を見るとしゃがみこんで野良仕事をしているおばちゃんの数メートル横に確かに割烹着と麦わら帽子を着込ませた案山子が斜めに立っている


そこで初めて友人達に野良仕事しているおばちゃんが視えていない事に気が付いた


こうなると釈明しても証明する手段がないのは知っているので憮然としつつも大爆笑する車内に乗り込んで黙ってやり過ごした


その後民家の軒先で井戸端会議をしているおばちゃん達に道順を聞いて無事目的地にはついたが

暫くは俺が案山子に道をガチで訊ねた!というネタで他の友人達にもからかわれたのだった

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