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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊?)踊り場の階下


大分前の話


地元で毎年行われる花火大会を楽しむ為、俺と友人達はとある場所に集まった


その場所は大会会場に近い会社ビルの踊り場だった


普段なら河川敷にビニールシートを敷いて飲みながら見物するのが恒例なのだが


友人が転職した先の会社が会場に近くその建物の踊り場が絶好の隠れ見物スポットになっているのに気付いた為、断って貸して貰える事になったのだ


流石に屋上へは上がる許可が下りず非常階段の踊り場での見物となったが工場系の為かその踊り場は大人が10人程車座になっても窮屈に感じない程広かったのだった


そんなこんなで皆で酒を注いだりしていると目の前で花火が打ち上がり始めた


周囲に遮蔽物もなく絶好の見晴らしに皆も楽しくドンチャン騒ぎをしながら花火を見物し

花火が終わっても混雑を避ける為にそのまま宴会は続いていた


階段の下からは帰路につく見物客達のはしゃいだ声やザワつきが暫く続いている


適当に酔った俺達はその混雑ぶりを時々上から見下ろしては座に戻って酒を酌み交わしていた


そろそろ見物客の声も聞こえなくなり辺りに静けさが出た頃になって来たので

確認の意味で踊り場から下の道路を見下ろした


さっきまで混みあっていた道も静かになり人影もまばらになった事を確認した俺達はそろそろ撤収して別場所で飲み明かそうとなり

踊り場の片付けを始めた


大概酔った野郎達がワイワイやりながら片付けていると何処からか子供の泣き声が聞こえてきた


どうやら迷子なのか泣きながら母親を呼んでいるらしい声がずっと聞こえている


「おい、流石に不味くないか?」


誰かが迷子?になっている子供を心配してそう言い出してから片付けどころではなくなってしまった


何せその子供の泣き声はずっと俺達のいる非常階段の下辺りから聞こえていたからだ


迷惑が掛からない様に片付けを終えた俺達は下に降りたついでにその泣いている迷子?を探そうとあちこち探し始めた


だが声はすれど一向に子供の姿を見つける事が出来なかった


か細く今にも消えそうな子供の泣き声はずっと俺達の耳に届いている


結局30分程探しても見つからなかった俺達は偶然巡回しに来た警官に事情を話して任せる事にして会社を後にした


その後飲み直しに向かったのだがさっきの子供が気になって少し盛り上がりに欠けたままその日はお開きになった


後日、場所を提供してくれた友人と会う事になったので期待はしていなかったが

(その後の子供の顛末)をダメ元で聞いてみる事にした


そこで話されたのはよくよく考えたらあり得ない事実だった


友人が勤めている会社は中に設置された工業機械の為か建物の脇にエアコンの室外機みたいなモノが大量に並んでいる


それは24時間稼働していて止まる事はなく花火大会当時もブンブンと唸っていた


花火大会を見物しに来た大勢の客達の声ならいざ知らず子供の消え入りそうな泣き声があの場所で聞こえる様な事はあり得ない、と言う事に翌日気付いたのだそうだ


言われてみれば当日、その泣き声をたぐる俺達もそのファンの音の大きさにお互いの声が聞こえなくて愚痴った記憶があった


じゃあ何故あの時あんなにか細い泣き声が全員にクリアに聞こえていたのだろうか?


それは今でも分からない

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