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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)死相part2


前回死相の様なモノが見える、と書いたが死期が近づいた人全てに見える訳でもなく全く役に立たない時が多い


現に交流の深い身内や肉親の死には思い入れが悪影響を及ぼすのか役立たずな場合が多い


中途半端なら無い方がマシだし随意に出来ないのは百も承知なので諦めているのだが一度だけ役に立った事がある


五年程前、コンビニに寄ると小学校時代の同級生と偶然再会した


近況を尋ねると隣県の会社に就職し現地の娘さんと家族に見初められ婿として迎えられたとの事だった

その日はたまたま帰郷してこれからパチンコでもしようかと思って出掛けてきたと言う事だった


誘われたので付き合う事になりパチンコ屋の駐車場で再び合流した時、彼の顔を見て驚いた


先程話していた時には感じなかった「影」が今まで見たモノより色濃く落ちていたからだ


あまりの変貌ぶりに思わず「なぁ、お前何か病気とかしてないか?」と聞かずにはいられなかった


彼は不思議そうな顔をしていたが余りにも真剣な顔で問う俺の様子を見て何か思ったらしく

おもむろに携帯を取り出すと何処かに電話を掛け始めた


「あー、俺だけどさ、母ちゃんに何かあった?…あそう、何もないなら良いんだけどさ」


電話を切ると「またまたぁ、驚かすなよ」と苦笑いをした


どうやら帰郷の理由が彼の母の入院にあるらしく急に不安になって連絡をしたが何にもなかったらしい


お互い苦笑いしながら店内に入ろうとしたその時、地鳴りが足元から聞こえてきた


「地震か?随分大きいな」等と話している間にあの本震である


店内を見るとよろけながらも店外に出ようと歩きだす人、慌てながら誘導する店員が見えた


振り返ると停まっていた車が生き物の様にうねっている


「おぃ、こりゃ相当デカイな」


と呆然としていると休憩所のテレビモニターが一斉に地震のニュースを報じ始めた


震源地や津波の報道が続く中、彼が慌てて連絡を取り始めた


(そうだ、彼の家族は福島だった)


上手く嫁さんと繋がったらしく家族の安否や状況等を慌ただしく問い質している


「悪い、心配だから戻ってみるわ」


彼は急いで車に乗り込むとパチンコ屋を後にした


俺も心配だったので家に帰ってみたのだが大した被害もなくテレビから流れる速報を固唾を飲んで見守った


想像を遥かに超える被害を及ぼした地震、


彼の家族は地震の後に襲ってきた津波に避難途中の車ごと流され数日後に車中で全員発見されたらしい

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