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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(謎)作喪神?


10年位前だろうか?


仕事上ユンボの免許が必要になり時間を作って県北の教習所に短気合宿みたいな形で入校した時の話


離れてはいるが同じ県内だし宿泊費を浮かせばちょっとした小遣いになるかな?と交渉したが

結局合宿免許は宿泊費込みの価格で値引きが出来ないとの事で仕方なく宿舎に泊まる事になった


同室になった人達はやはり建設関係の免許を取りに来ている人達で年齢も職業もバラバラだったのだが


1人、珍しい人がいた


その人は昔よくサスペンスドラマに出ていた俳優さんなのだが名前が分からない

結構良く見ていた人だったのだが主役というよりも脇役、人の良い犯人役とか騙されて殺されるとか

そういう役をよくやっていた俳優さんだった


四人部屋で残りの2人はいかにも土建屋テイスト溢れる人達だったので

普通?な俺に興味が沸いたらしく直ぐに打ち解けて話をする様になった


彼は映画だかドラマの役で重機の免許を持っているという強味を生かして役を貰う為に受講した、という事で


俺がマイナーなその人を知っていた事に気を良くしたのか聞きもしない事まで話してくれたのだった


受講生と言っても未成年でもないので本来は禁止だったが近くのコンビニで酒を買ってきて差し飲みしていると


彼のスマホが定期的に震えている


どうやら彼の奥さんが連絡をくれている様で時々画面を見て返信をしている


ソコで聞いたのだが彼の奥さんは台湾の人で彼の仕事のマネジメントもしてくれているらしい


返信を終えるとスマホを置いてその都度懐中時計?の様なモノを取り出して見ているので気になって訊ねると


それは懐中時計だったのだが中に彼と彼の奥さん、親御さんの写真が貼られているらしい


(結構寂しがり屋な人なのかな?)


と思ったがツッコむ程でもない


「へぇ~、ご家族思いなんですね」


とか適当に言って次の日の授業に向けて早めに就寝する事にした


同室の皆で少し飲んだせいかイビキが煩くなかなか寝付けないでいると

その俳優さんが寝ている2段ベッドの脇がボンヤリ光っているのが目に入った


スマホが光っているのかな?と思っていたのだがどうも光り方がおかしい


定期的に明滅している様なのだが着信を知らせる明滅とかではなくモールス信号?の様に不定期に明滅していたのだ


寝付けない事もあって暇なのでその光が照らす天井をボンヤリ見ているとその明かりの中に人影?があるのに気付いた


(え?)


酒は入っていたが酔う程飲んだ訳ではない

明滅する光の中にいる人影はどう考えても普通の人のサイズではなく人形位のサイズなのに気付いた俺はゆっくり俳優さんの寝ているベッドを見ようと顔を動かした


ベッドサイドに置かれた棚の上に彼のスマホと懐中時計が置かれている


スマホの画面は真っ暗で光っていたのは懐中時計の方だった


どう見てもアンティークな時計が光を発する訳もなく光っていたのはその時計の上にいたフランス人形?の様なモノだった


勿論その俳優さんがフランス人形を持って来る訳がない

となるとあんまり関わると碌な事にならない「モノ」だ、と察した俺は気付かないフリをしつつ寝返りをしてやり過ごした


翌朝俳優さんにその事をそれとなく聞いたが懐中時計は奥さんからのプレゼントで入手経路も謂れもサッパリ分からないらしい


気に入ったモノを大切にする事は良い事だと思うけど執着し過ぎるのは良い事はないよな…


と思ったが俳優さんの手元に来てからかなり経つらしいし何のトラブルも起こってないそうだから


触らぬ神…の精神でそっとしておいた


近年サスペンスドラマも絶滅危惧種になり彼の姿を画面で見かける事もなくなったが

彼は今でも俳優業に勤しんでいるのだろうか?


名前を聞いた筈なのに速攻で忘れた俺が彼の活動を知る機会はないだろう

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