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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)釣り堀の客


突然で何だが俺は短気であまり釣りには向かない性格だ


小学生の頃友人達の間で釣りブームが到来し、誘われて駄菓子に置いてあったチャチな釣りセットを買ってチャレンジしたが

30分も経たずに断念し、買ったばかりの釣具を友人にくれて帰宅する程合っていなかった


そんな俺がまたまた友人の間で到来した釣りブームに巻き込まれたのは二十代中頃だった


苦い思い出もあるし最初はやんわり、次第に必死に抵抗したのだがどうやら友人達は俺を海釣りに誘う事を最終目標としているらしく

どんなに断っても一歩も退かず何かとエサ?をちらつかせながら説得に躍起になっていた


最終的に俺があまりのしつこさに折れて折衷案を受け入れた


その折衷案とはいきなり海釣り!ではなくとりあえず近くの釣り堀で「釣る楽しみ」を知って貰って気に入ったらいざ海釣りに、というモノだった


あんまり乗り気にはならなかったが数時間こんこんと説得され半ば強制的に決行される事になった


その釣り堀は山あいにあるキャンプ場近くにある自然を生かした造りになっていた


俺達が到着し、準備を始めたのだが平日だった事もあり客は2~3人が釣糸を垂らしている位だった


虫が嫌いなので餌も付けて貰い上げ膳据え膳?状態で池に釣糸を垂らす


大人になったからか流石に子供の頃よりは忍耐力がついたのか釣れはしないが何となく耐える事は出来ていた


友人達がはしゃぎながら魚をあげている光景を見ながらボンヤリ辺りを見回していると


池の反対側で釣糸を垂らしている客のおっさんに自然と目がいった


彼もまた俺と同じく釣れていない様子だったが何かがおかしい


ずっと見ていた訳ではないが彼は俯いつつ水面に浮かぶ浮きを見たまま微動だにしなかったのだ


はしゃぐ友人達はともかく他の客は誰かが釣り上げるとそっちを見たり話しかけてきたりするのに

そのおっさんは全く反応がない


でもまぁ考え事をしながら釣る人もいるらしいのでそれほど気にも留めなかった


漸く食いついた魚を釣り上げ友人に釣り針を魚から外して貰っていた時だった


視界の端にいた例のおっさんが突然前のめりのなったかと思うとそのまま前転する様な姿勢で目の前の水面に落ちた


「あっ!」…ドボンッ!


気付いた時には既に水音と共に彼が水の中に落ちている瞬間だったので俺は大きな声をあげてそっちに歩み寄ろうとしていた


「お、おい‼何してんだよ⁉」


慌てていたせいか竿を引っ張ったせいで釣り針から魚を外してくれていた友人がビックリしながら声を張った


「えっ?」


今目の前で釣糸を垂らしていたおっさんが水の中に落ちたというのに誰も驚いていない


俺の挙動に文句を言っていた友人から落ちたおっさんの方に視線を戻すとその場所には釣具もなく落ちたばかりだと言うのに波紋も残っていなかった


結局その事でテンションだだ下がりになった俺は友人達を残して管理棟?の横にある自販機の側で彼等が満足する迄ボンヤリしながら待つ事にした


帰り道、友人達は俺が何か見たのかを問い質していたが説明しても信じて貰えないだろうから適当に誤魔化しつつその日を終えた


後日、俺の挙動が気になった友人の1人がその釣り堀のオーナーに色々聞いてきたらしい


以前、客の1人が突然心臓発作に見舞われそのまま池に落ちて亡くなった事があったそうだ


その事実を聞きつけた友人は「見たんだろ?見たんだろ?」としつこかったが

話した所でネタにされるだけなのでまたお茶を濁してやり過ごした


後日談となるが友人達が俺を海釣りに釣れて行きたかった理由をゲロった


視える俺を海釣りに連れて行ったら何か視るんじゃないか?という「賭け」をしたらしい


道理でしつこかった筈だ


とりあえずその友人達とは距離を置く事にしてその後釣りの誘いは一切断る様にした

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