(謎)卒業写真
中学生の頃、卒業アルバムに載せる集合写真を撮影する事になった
1組、2組、とクラス単位で校庭に呼ばれ各々撮影を済ませていく
そしていよいよ俺のクラスが呼ばれ校庭に集合して無事撮影は終了した
それから1週間程経った頃だろうか、担任から「もう一度写真を撮り直すぞ」と言われた
「失敗かぁ?」
「誰か目でも瞑ってたんじゃね?」
等色々憶測は飛んだが答えがある訳でもない事なので皆不承不承また校庭に集合させられ再度撮影を済ませた
それから3日程してまた担任から再度卒業写真を撮り直す、と言われて流石に皆が不満を漏らし出した
「何で俺らだけ3回も撮らなきゃならねぇんだよ?」
「カメラマンだってプロなんだから修正するとかして載せれば良いのによ‼」
等と文句を言っていたがやはり理由は分からない為にグチグチと文句を言いながらも再度の撮影に応じた
撮影が終了して各々憶測を飛ばしていたのだが肝心な事に気付いた
「あれ?今日Aが休みなんじゃね?」
「だよなぁ?アレか?右上に丸枠で別撮りでもするのか?」
Aはここ最近元気がなくついに今日病気を理由に休んだので仕方ない事とは言え一生の思い出にもなる卒業写真に別枠で写る事に俺達は可哀想にな、とAを憐れんだ
それから更に1週間程経った頃だろうか
朝のホームルームで担任からAの、と言うかAの家族の訃報を知らされた
詳しい事は話されなかったが友人達や親達からの話を総合するとAの親が事業に失敗し破産
結構な負債を抱えて路頭に迷う寸前でAの家族は心中を選び亡くなってしまったらしい
それから暫くはAの話で持ちきりになり卒業間近と言う事もあって授業も浮わついた感じで受ける日々が続いた
そんなある日、別のクラスの奴がビックニュースを持ち込んで来た
彼の親戚、実は卒業写真を撮影した写真屋だそうで俺達のクラスだけ何度も撮り直しをしていたのが不思議で理由を聞いたそうだ
親戚の写真屋もずっと理由を渋っていたのだがとうとう根負けして現像した写真を見せてくれたそうだ
「で、これだよ」
彼が俺達の前に置いた写真は例の撮り直した前の写真だった
少し俺達が騒いだ為、クラスの女子達もワラワラと寄って来て結局回し見する様に皆で写真を凝視した
クラス全員が並んで写る集合写真
最初に気付いたのは小さな悲鳴を上げた女子だった
「これ…」
何処が失敗したのか探していた俺達の目の前で彼女はその異変の場所を指差した
1枚目と2枚目、パッと見何の失敗もない様に見えていたのだが
彼女が指差した先の人物がおかしな写りかたをしていた
「…な、何だよ?」
指を指された先に写っていたのは今気味悪がって声を上げた友人だった
皆が笑顔で写るその集合写真、その中で友人の顔だけが大きく歪んで写っていた
「え?こっちは俺かよっ!?」
そう騒いだ2回目の撮り直し写真では別の友人の顔がヘチマみたいに歪んで写っている
心霊写真か!?と皆一様に騒ぎ出し、歪んで写ってしまった友人達は何かの祟りでもあるんじゃないな?と青ざめている
そんな中、最初にその異変に気付いた女子が更に気味の悪い事実に気付いてしまった
「これ…A君の隣の人が歪んでるよね?」
そう、歪んで写ってしまった友人の隣、そして列の前には必ずAが写っていたのだ
こうなると流石に騒ぎが収まらなくなってしまって授業どころではなくなってしまった
丁度受験日程というか進路が決まった生徒達が遊ばない様に自習授業の様な形だったので
騒ぎを重く見た担任は授業を切り上げ皆に帰る様に指示した為、皆動揺しながら帰宅する運びになった
翌日、試験でいなかった生徒達も撮り直した卒業写真の理由を聞かされザワついたが
昨日の内に担任は写真を持ち込んだ生徒からその写真を没収し、親戚である写真屋にも口止めをしてしまったらしく
実物を見られていない生徒達がそれ以上騒ぐ事もなくなってしまったのだった
亡くなってしまったAの顔が歪んで写るのではなくその周囲にいた友人達の顔が歪んで写るという謎だけが残ったまま卒業を迎えそのまま話は立ち消えてしまった
あれから何度か同窓会で同窓生と顔を合わす事になるがその度にあの卒業写真の話は話題となっている




