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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)お堂の中の友達


俺が通っていた幼稚園は寺が経営していて

敷地内には小さなお堂とその隣には墓地が広がっていた


園の雰囲気が嫌いで度々脱走し、近所の親戚の家に遊びに行ったり駄菓子屋で買い物したりと

親はもとより園の先生方にも相当迷惑をかけていた問題児だった


度重なる脱走にとうとう先生がキレてお仕置きの意味でお堂に閉じ込められた事が一度だけあった


お堂の中は蝋燭の灯りで薄暗くはあるものの完全に真っ暗ではない


だがその薄明かりに浮かび上がる本尊やその他の装飾物の類いは小さい子供に恐怖を感じさせるには十分だった


外は丁度庭遊びの真っ最中


他の園児達が

「何で入れられてるの?」


等表で反省を促している先生に問いかけている声が聞こえる


コッチはそれどころではない

戸を叩いてもびくともせず背後には灯りの揺らめきで仏像が今にも動き出しそうだ


恐怖がピークを迎え、号泣寸前になったあたりで背中の方から視線を感じた


(まさか仏様が…)


と怯えていると「クスクス」と子供の笑い声が聞こえた


えっ?と振り返ると木魚の台の裏から子供がこっちを見て笑っている


さっきまで気絶しそうな程恐怖を感じていたのに同じ年頃の子供がいると思っただけで急に心強くなった


お互い何を話したのか、何をしたのかは全く記憶にない


後に偶然街中で出会った当時の担任の先生に聞くと泣きわめいていたと思ったら急に静かになり、


反省したのかと思っていたが様子がおかしいので戸を開けてみると俺が仏像の方に向かって倒れていたらしい


不思議なのはその子供の存在

当然ながら一緒にお仕置きされたと言う事もなく極度の心的ストレスによる幻覚だろう、と自分なりに納得していた


それから数十年、園は少子化の煽りをまともに食らい住職の代替わりもあって閉園を余儀なくされた


その閉園式に縁あって参加する事となり久々に伺う事になった


小さい頃は相当広く感じた体育館も大人になった今では手狭に感じる


園の最後の計らいなのか壁際には設立時からの写真や資料が展示されていたので何となく見ていると一枚の写真に目が留まった


卒園式の時の集合写真なのか園児達がお澄まし顔で写っている


相当古い写真だし園児にも先生にも見覚えはないのだが気になったのは園児達が着ている園服の方だ


お堂の中で見たあの子の服装、それは正にその園服だった


だがその園服は俺が入園する遥か昔に入れ替えられたそうだ


じゃああの時、お堂の中にいた子供は一体…


確めようもない疑問が突然沸き起こったがそのまま思い出としてそっとしておいた方が良さそうだと思った


少なくとも彼のお陰で恐怖は和らいだし夢か現実かも定かではないがその一瞬はとても楽しかった記憶があるから

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