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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊?)降りるな!


地元の北部にハイキングコースにもなっている岩山がある

あれは小学校高学年の頃だろうか?


近くに住む他校の同級生とクラブ活動で仲良くなり何となくその岩山に登ろうという事になった


登山なんか初めてだし装備なんか勿論ない

今考えると無謀過ぎる行為なのだが手弁当1つ持って早速山へと向かった


その日は平日の午後だったせいか他に出会う人もなく小学生が3人程度で登る事を注意する人もなかった


まぁ幸運だったのか何だったのか、行きは何事もなく和気あいあいと登山を楽しみいよいよ帰りの行程となった


「俺君、此処降りるんだよ」


友達の1人が指差す先には大きな岩があり、鎖が下へと垂れ下がっている


「え?これって危ないよね?」


どう見ても子供が降りて良い様な場所にはどうしても思えず俺は尻込んだが友達2人はいそいそと岩場を降り始めた


此処で止める選択肢を奪われドキドキしながら鎖を手に岩場をつたい降りようと下を向いた瞬間、上から大人の声がした


「降りるな!バカ野郎!」


正直降りる事にビビっていた俺は突然の大声に更にビクついて急いで岩場の上へと戻る


友達達も流石に大人に注意されたからか急いで岩場の上へと戻って来た


「何だよ、俺君…ビビったの?」


「…えっ⁉だってさっきおじさんがダメだって言ってたじゃん」


「…そんなの聞いてないよ?」


どうも話にズレがあるのでその場で答え合わせをする事にした


俺は岩場の上から大人に大声で注意され戻ったつもりだったが友達2人は俺が慌てて引き返すのを見て何事かと戻って来たらしい


「でも…おじさんが怒ってたんだよ」


そういっては見たもののよくよく考えてみればその大人を見た訳でもなく戻ってからも姿を見た訳ではなかった


その日はまぁ初めてだし気分が削がれた、みたいな感じになり別ルートで下山したのだった


他校の同級生故にそれ程頻繁に遊ぶ事もなくその内に疎遠となってしまった為に岩山の事はすっかり記憶から抜け落ちていたのだが


二十歳過ぎた頃にその岩山では滑落事故が多発していて時々死亡事故も起こっている、という話を聞いた


その事故はやはり俺が躊躇した岩場で頻繁に発生しており鎖頼みの降下に足を滑らせたり握力が尽きたりして起こるらしい


登山が趣味でもない俺が岩山に行く事はその一回きりなので結局あの声は誰のものだったのかとかは分からないが

もしかすると岩山で亡くなった人が見かねて注意してくれたのかも知れない

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