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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
244/441

(人?)空き家


ここ数年スカスカだったご近所も宅地開発が進んで金太郎飴みたいな家が沢山増えて来た


それとは相反する様に旧市街地には「ここって人、住んでんの?」という空き家が目立つ様になって来た


親元から離れ他県で居を構え親が亡くなるとそのまま空き家


つい最近そういう空き家を転々としていたホームレスが捕まったそうだ


親戚も旧市街地に居を構えていたが奥さんの死を切欠に息子さんの住む隣町に同居を決めたというのでせめてものお礼に引っ越し作業を手伝う事になった


小さい頃、旧市街地で開かれる祭りにその親戚の家を拠点にさせて貰って大分世話になっていたからだ


親戚の家の周りは多少道路の拡張で見慣れない家も建ち始めていたがまだ当時の懐かしい街並みも多少は残っている


(あぁ、あの家は駄菓子屋だったな…)とか(ここは金魚売ってたけどいつの間にか潰れてたよな…)とか


昔の記憶にある懐かしい街並みを楽しみながら引っ越しを手伝っていたのだが

とある古い家に人影がチラチラ見えているのに気付いてからは作業に身が入らなくなってしまった


その家は親戚の家から3~4軒隣の古い民家で焼き杉板の様な外壁と褪せた朱色?のトタン屋根の小さな家だった


何故その民家の人影が気になって仕方がなかったか?と言うとどう見ても人が住んでいる様には見えなかったから。


狭い庭には手入れのされていない庭木や雑草が繁り玄関も半分位板が打ち付けられている


親戚の家からは丁度その庭越しに恐らく居間?が見えているのだが昼間なのに真っ暗なその部屋で時々人影がチラチラ動いているのだ


俺の感覚では人が住んでいる様には見えないがもしかすると住人はちゃんと住んでいるかも知れない


廃屋かどうか聞いて違った、というのも失礼なのでなるべくその家を気にしない様に引っ越し作業を手伝い、何とか3時過ぎには引越業者のトラックを送り出した


手伝ってくれたお礼に遅めの昼飯を奢ってくれるとの事で近くのファミレスに行く事にした


食事も終わり思い出話も一段落した所でどうしてもあの家の人影が気になって尋ねてみる事にした


「あのさ、三軒位隣の…確か昔お婆ちゃんがいた家って誰か住んでるの?」


「は?○○さんトコか?あそこは十年前位から誰も住んでいないけど…誰かいたのか?」


「あ、いや…手伝いしてる時に人影がチラチラ見えてたから…」


親戚の息子はこりゃ大変だ、と結局俺と2人でその家に確認に行く事になってしまった


文頭に書いた不法占拠事件が結構深刻な問題になっているかららしい


残りの親戚は皆新居へ、俺と息子さんの2人は戻ってあの家へ。

こんなに大事になるなら言わなきゃ良かった…と後悔したが後の祭りだった


5分程で例の家の前に辿り着いた俺達は秒で俺がゲンコツを貰う結果となった


近付けばどう見ても人が入っている気配はない

完全な空き家(廃墟)だったからだ


結局その場は俺の勘違い、という事で場が収まり散々嫌味や笑い者にされて引っ越しは終わったのだった


数年後、道路の拡張工事に引っ掛かった空き家から人骨が発見され騒動になった


事業に失敗して地元に戻ってきた息子が人の目を避けて空き家だった実家に隠れ住んでいたらしい


病死か事故死かは分からないがその人は家の中で誰にも気付かれずに骨となってしまったそうだ


そう、あの人影がチラチラ見えていたあの家で


問題というか疑問はその息子の死亡したとされる時期と俺の見た時期がズレていた事。


俺が見たのがその亡くなった息子なら死亡した時期が半年以上後になる計算だったのだ


まぁ噂だし時期が前後していたのも詳しく調べた訳でもないので本当は生きている時に見かけたのかも知れない


という事で(人?)にしておいた

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