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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(謎)地滑り


昨今は異常気象で各地で自然災害に遭われている方々がいますが皆さんの所は大丈夫でしたか?


去年の大雨でとうとう自分の家のご近所にも被害に遭われた方が出てしまいました


今回はそれで思い出した一昔前の話。


若い頃、スキーに嵌まっていた俺は宿代や移動費を抑える為にスキー場の近くの民宿で泊まり込みのバイトをした事がある


民宿のオッチャンは優しい人で空いた時間はなるべく滑って来て良いよ、と言ってくれたので

同じ目的で住み込みバイトしている知り合いに羨ましがられた位スキーを満喫出来た


シーズンも終わり民宿に泊まる客も疎らになってきてその年のバイトは終わったのだが

春先に突然民宿のオバチャンから電話があった


オッチャンが怪我で動けなくて人手が足りないとの事で助っ人に来てくれないか?

そんな内容の話だった


世話になっている事もあるし1週間程だと言うので地元の用事を切り上げて手伝いに向かった


そのスキー場は冬場はスキー、春先以降はハイキングや登山で賑わうので雪解けすると登山客が民宿に来るのだ


今では考えられない話だが料理作りが得意な俺はお客さんの食事を作ったりして大いに感謝された


三日目位だったと思う


雪解けで地盤が緩んだのか道路が地滑りしてスキー場全体が孤立してしまったのだ


復旧は急いでも1週間位は掛かると言う事でバイトどころではなくなったのだが困っていたのは俺達よりも宿泊客の方だった


休日を使って登山に来た親子やカップル達が職場に学校に事情を説明しまくる

ちょっとしたカオスがあって大変な事態になったのだが

その中で1人で泊まっていたサラリーマンのお客さんの焦り様が異常だったのだ


「どうにかして帰る方法はないか?」

「あそこの道を使えば街に降りられるんじゃないのか?」


と俺やオバチャン、果ては近所の人にまで聞きまくっている


流石に尋常じゃない慌て様なのでこっちも気になって事情を聞くと


何やら数日後に大切な商談があって彼が行かないと甚大な損害を被るらしい


正直(そんな大事な商談の前に山登りなんかに来るなよ)と思ったがお客さんだし可哀想で近所の人も一丸となってルート探しを考えてくれた


道路は完全に落ちて通行出来ないが登山ルートを使って反対側に出れば恐らく行けるんじゃないか?

という地元の消防団員のアドバイスに彼は2つ返事で飛び付いたのだった


だけど登山ルートはまだ雪が残っていて昼間でも気をつけないと滑落の危険があるし

このアイデアが出る迄に日はとっくに落ちていたから出発は明日にしよう、と言う事になった


翌日、山は生憎春の吹雪で視界も利かずまた明日にしよう、となったのだがサラリーマンはどうしても今日中に街に降りたいと聞かない


「お客さん、地元の人の言う事は聞いた方が良いよ」


と皆が言うのに彼は目を盗んで登山ルートに入ってしまったらしい


当然気付いた村の人達は大騒ぎ、下手をしたら凍死したり滑落して怪我されても困る、と消防団総出で彼を探す事になった


雪の止んだ登山ルートを中心に30名程の捜索隊が必死に探すも見つからず

宿泊名簿に書かれた連絡先に電話を掛けるも番号違いで繋がらずで八方塞がりになってしまった


たまたま彼の宿の宿泊客が職場を聞いていたそうで聞くのはそこしかない‼と電話を掛けたが


「そんな名前の社員はおりません」


と返されていよいよ「彼は誰?」となってしまった


その内に復旧作業が終わって道路が開通し、オッチャンも退院して来たのでお役御免となった俺はモヤモヤしながらも帰宅した


次のシーズンでまたバイトに行った俺はオバチャンに真っ先にあのサラリーマンのその後を聞いたが行方不明のまま未だに見つからないと言われた


彼は一体何者で何の為に焦っていたのか?

全く分からないまま事件?はうやむやになってしまった


因みに無線飲食も疑ったが宿代も迷惑料として多めに置いて行ったらしい


本当に何がしたかったんだろう?

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