表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
222/441

(人)視線を感じる部屋


東京に一人暮らしをしていた頃、当時付き合っていた彼女の妹が部屋探しをするというので

経験者の俺も駆り出される事になった


賃貸情報誌を片手に希望の金額と見合う部屋を週末見に行ったりして漸く納得の部屋を契約した


一月程経った頃だろうか?


彼女づてにこんな相談が舞い込んで来た


「部屋にいると何処からか視線を感じて気持ち悪くて仕方がない」


妹は頼る所も分からず姉に泣きついて来たのを俺に相談した、という訳だ


「気のせいじゃないの?」


「そんな事ないんだって。何かいる気配とかも感じるらしいよ?」


女の子の一人暮らしだ、何かあってからでは遅いだろうとその週の休みに早速妹の部屋を訪れた


マンションタイプの三階、付近には高い建物はそれほどなく覗かれている可能性も低そうだ


「んー、別に何か悪い感じはないし…でも1日泊まって様子見てみようか?」


不安がる妹さんを落ち着かせる為にその日は彼女と三人で妹宅に泊まり込みの番をする事にした


安心したのか妹さんは食事が終わると直ぐに眠りこけ彼女もうつらうつらしながら妹の横で寝息を立てだした


俺は、と言うと寝ずの番を仰せつかったので仕方なくビデオを見ながら一杯引っかけていた


…ゴソ…ゴソゴソ…ゴト…


「ん?」


何か物音が玄関横のキッチン付近で聞こえたのは夜中の2時を過ぎた辺りだと思う


…ゴソ…ゴト…


(…ネズミにしちゃ音が重いな…配水管でも暴れてるのか?)


そう思って何気に足音を忍ばせてキッチン付近に近付いた


…ゴソゴソ…ゴトン…


(違う、キッチンじゃねえや…)


その物音はキッチンからだと思っていたが近づくとキッチンからではなくユニットバスの方から聞こえて来ていたのだ


…ゴソ…ゴト…


俺は意を決して風呂場のドアを一気に開いた


…バタンッ‼


ゴトゴトゴトゴトッ!!


風呂場には誰もいなかったが天井についていた換気扇の周りの天井が物凄い音と共に何かが移動している気配がした


俺は彼女と妹さんを直ぐに起こして俺のアパートに移動させると深夜お構い無しにマンションの管理会社に連絡を入れ捲った


翌日、管理会社の担当者が早朝に電話をしてきたので状況をかなり強めに説明して

あのままではあそこに住む事は出来ない旨と解決するまではホテルを借りるからホテル代を負担する様に交渉してやった


1週間後、また管理会社の担当者から連絡があり、解決したので事務所に来て欲しいと言われたので三人で訪れた


視線と物音の正体は同じ階に住む中年男性で換気扇の付いた天井裏を移動して同じ階の女性を覗いていたそうだ


妹さんでは強気の交渉は出来ず泣き崩れるだけだったので


同等の条件の部屋への引っ越しとその費用を管理会社持ちで早急に手配する事を取り決めさせた


どうせ管理会社も犯人に損害賠償請求はするだろうし手間だけ負担しろ、と交渉したのだ


かくして1ヶ月程で近くのマンションに引っ越しとなり部屋も管理会社の計らいでお値段そのままグレードアップし事件は終結した


良い歳こいて天井這ってまでして覗いて虚しくならないのかな?


そう思った事件だった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ