(霊)ナンパ橋
若かりし頃、地元の駅前大通りは夜ともなるとナンパスポットと化していた
田舎ならではなのか駐車している女性陣の車の横を男達の車が徐行、ドア越しに声をかけて
意気投合するとお互いの車でカラオケなりに移動して楽しむシステムが出来上がっていた
この大通りから一本脇道に逸れた所にナンパ橋と呼ばれる場所があった
ある土曜の夜、友人と向かったが生憎取り締まりの直後なのか大通りには車が殆どいない
ダメ元で件の橋に行ってみるとコンビニ前のガードレールに女の子達がいたのですかさす声を掛けた
聞くとどうやら他の女友達と約束をしたがすっぽかされたらしく軽いノリで誘いに乗ってきた
俺は助手席から降りると一人(以下A)乗せ、自分ともう一人(以下B)は後部座席に収まった
「何処行くー?」
友人がABに聞くと
「海ー!」
と言うのでお泊まりコースを確信した友人が更にテンションを上げていた
夜の海に着き砂浜で遊んだりした後、二手に分かれて一夜を過ごし翌日も海水浴を楽しみ楽しい時間を過ごした
地元に戻り駅前で二人を降ろした頃には夜の9時を回っていただろうか
その帰り道、友人は興奮気味にAとの一夜を語り出したが俺が少し微妙な返事をしたのを友人は見逃さなかった
「おい、何だよ?」
中学からのツレに打ち明けない訳にはいかない、仕方なく昨夜から見えていたモノの話をした
実は最初の出会いの時俺は「3人」だと思っていた
車に乗せた時に改めて2人だと気付いた瞬間から
Aの背中越しにもう1人いたのだった
何故先に言わない?と突っ込まれたがノリノリの友人に水を差す訳にもいかなかったし何より俺も欲に負けた
盛大な後出しに最初は怒った友人だったが話が終わると一言
「でも楽しかったよな…」
とポツリと言った
俺も「楽しかったよな…」と返した




