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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)中学校


中学時代の話を1つ。


小学校、中学校と地元の学校だったのだが

年回りが悪かったのか丁度木造校舎からの改築工事にぶち当たって

最終学年は全てプレハブで学生生活を送り新校舎へは入らずじまい、とツイていない学年だった


元の木造校舎にはお約束の七不思議系の怪談があったが根も歯もない噂話でいかにも創作話しかなかったが

雰囲気だけは十二分に備えていたので夏になれば在校生やOB達が夜な夜な不法侵入を繰り返していた


当然雰囲気だけなので実際目撃した話などはなかったのだが個人的に一度だけ見てしまった事がある


三年生の夏休み、退屈をもて余した仲間達と学校へ肝試しに向かった


当時はセキュリティのセの字もなく宿直などもなかったので大騒ぎして近隣の住民に通報されない限りは

侵入し放題だったのだが校舎巡りにも飽きてしまい次はプールで泳ごう、と言う事になった


ほぼ月明かりのみのプールは昼間とは大違いだったが特に怖さを感じる事もなくお菓子や飲み物、

更には浮き輪やボート等を持参していたので各々夜のプールを楽しんだ


皆が追いかけっこ等ではしゃぐ中、俺はマットを浮かべて水面を漂っていたのだがふと脇の更衣室に目をやると

女子更衣室の曇りガラスに人影が横切ったのが見えた


(あれ?誰かいるのかな)


と気にも留めなかったのだが冷静に考えて備品の破損や盗難が起こると洒落にならない、と思い


小声で全員の点呼をしてみた。◯橋、◯木、◯佐、◯井…全員いる


となるとさっきの影は見間違いか?と思ったが突然点呼を受けた皆は納得がいかず理由を問われたので

実はさっき、と説明すると急に全員が盛り上がって確認してみようと言う事になった


元々肝試しで集まった面子なのでテンションが上がり、一塊になり更衣室に向かったのだが

当然鍵が掛かっている…と思ったが閉め忘れたのか内側のドアは無施錠で軽く侵入が出来てしまった


真っ暗な中、しかも普段は入る事が許されない女子更衣室に皆ドキドキしながらの凸だったが

当然というか薄明かりに照らされた部屋の中には人の姿はなかった


「やっぱ見間違いじゃね?」

「だよなぁ」


と全員が安堵し部屋を後にしようと踵を返した瞬間


曇りガラスにハッキリとした人影が横切った


「うわぁー‼」


誰かが声を荒げた為に全員がパニック状態になり転げ出る様に更衣室から抜け出し

プール周辺に持ち込んだモノもそのままにフェンスを越え一目散に逃げた


最短距離にある友人宅に戻って落ち着きを取り戻した俺達が荷物を置き去りにしていた事を思い出し


戻った時には既に住民の通報で警察が巡回に来たらしく回収不能となってしまっていた


翌日、急遽全校集会が開かれ犯人探しが始まったのだが間抜けな事に名入りのバッグを置き忘れた◯橋から


芋づる式にバレて全員こっぴどく叱られ、生活指導の教員に丸刈りにされる罰を受けて事件は収束した


あの人影は誰だったのかは分からない。言える事は更衣室の内鍵は確かに空いていたが外鍵は施錠されていたのと


俺が最初に目撃してからは誰も出入りはしていなかった。そして凸後誰もプールに侵入していないので

この世のモノではなかったのだろう、とは思う


この事件は怪談話として尾ひれがついたが木造校舎の取り壊しと共に風化してしまった、と後に後輩から聞いた

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