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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)事故


学生の頃、ゴルフ部を立ち上げた


近くのゴルフ場に親戚がいて何かと融通を利かせてくれ

客のいない時間帯にセルフで片付けまですればタダでラウンドしても良いという好条件をゲットした


準備運動としてコース外にある打ちっぱなしで練習を始めるのだが

業務を終えた研修生達も混じるので教えて貰ったり差し入れしたりと和気藹々と楽しんでいた


普段は部員は部員、研修生は研修生同士でラウンドするのだが

たまには、と言う事で混合でラウンドする事になった

幾ら研修生と言えどセミプロ、打音も球筋も参考にすらならず惚れ惚れと見ていると

部員の中でも飛ばす奴が妙に対抗心を抱いて張り合い出した


ラウンドも半ばにきて余りの技術力の差に心が折れたのか大分大人しくなったのだが

ドライバーの飛距離だけは!と無茶苦茶なフォームでかっ飛ばした


「ファーーー!!!」


誰もいないのは分かっているが危険球に掛け声をするのはマナーである

部員が打った打球は大きく右に逸れ林の中に消えて行った


「カァーーーン!!!」


木か何かに当たる音がして直後人影の様なモノが倒れるのを目撃した

「ヤバい‼人がいたのか⁉」

客はいなくてもコースを管理する人がいないとも限らない、

俺達は転げる様に斜面を駆け降りてボールの行方にダッシュした


「ハァハァ…良かった…見間違いか…」


しゃがみこむ部員の辺りに人はおらず折れた枝とボールがあるだけだった


少しドタバタはあったがラウンドは無事終わり折角だからと夜に飲み会を開いた


研修生達も日頃摂生した生活でかなり辛抱していた様で弾けていたのだが

話はさっきの人影の話になり急にしんみりした雰囲気になった


どうしたのか理由を聞くとあの場所には先輩から聞かされた噂があると言う

曰く「あそこで客の球を頭に受けて死んだ従業員がいた」らしいのだ


「もしかしたら○君の球に当たったのはその人の霊なのかもな」

と研修生の1人がポツリと話してくれたのだが妙に場が沈んでしまった


飲み屋を出た俺達は懐中電灯を片手に例の場所に向かい僅かばかりのお供えを置いて手を合わせた


そのゴルフ場は暫くして潰れ今はソーラーパネルが並んでいる寂しい場所となったが

あの従業員は今でもあの場所にいるのだろうか?

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