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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(霊)バスの中で


俺の通ってた高校は山の麓にあって駅から離れていたから電車からバスに乗り継いで通ってた


短大も併設した大きい高校だったから当然短大生も相乗りする訳で時折目の保養になっていたが

極々稀に変な存在も相乗りしてくる


初めて(ソレ)を見たのは雨の日だったと思う


高校生の通学時間帯は鮨詰め状態になるのだが最後部座席の手前の1人掛けシートが

こんなにぎゅうぎゅう詰めなのに空いていた


(何で誰も座らないんだろう?)


と思っているとイヤホンを着けた男子生徒がスイッと座って即座に飛び上がった


「何だよー、椅子濡れてんじゃん」


あぁ、なるほど。

シートに誰かずぶ濡れで座って濡れたままだったから誰も座らなかったのか


理由が分ければ興味も失せそのままバスを降りた


その日は途中で具合が悪くなって早退する事にした


バス停がある駐車場迄下りるとバスは既に停車していた


乗り込むと誰もいなかったので一番後ろの席に陣取って発車時刻になるのを目を瞑って待った


聞こえるのは低く唸るエンジン音と雨足が少し強くなってガラスを叩く音だけだった


「○○発○○駅行き、間もなく発車致します」


1人しかいないのだから…とは思ったが規則なのだろう、程なくしてバスは発車した


走り出して数分も経った頃、目を瞑っている俺にも分かる位の稲光が車内を照らした


ビックリして目を開けると目の前の座席に女性が1人びしょ濡れで座っている


(あれ?いつの間に乗り込んで来たんだろう?)


因みにバスは民間会社と提携している専属直通バスで途中停車はしない


多分目を瞑ってる間に乗り込んだんだろうな、とぼんやり女性を眺めていて不自然さに気付いた


髪も服もずぶ濡れなのに拭く様子も身支度を整える様子もない


髪から滴る水滴は見えるのに容姿をはっきり見ようとしても何故か輪郭がボヤける


途端に冷や汗がどっと出た


良く考えればドアを開けて貰わないと乗り込めなかった筈なのに音もしていなかった


バスはそんな事お構い無しにゆっくりと駅に向かっている


心霊ドラマだとこの後振り向いたり声が聞こえたりするだろうがバスは何事もなく駅に着いた


「ビー(ブザーの音)…プシー…」


駅名を告げるアナウンスと同時に開いたドアに駆けて表に出た


慌てて女が座っていた辺りを見ると俯いたまま未だに座っていた


バスは俺を降ろすと直ぐに車庫の方に向かって発車していった


あぁ、朝誰も座らなかったあの場所にはあの人が座っていたのか…

妙な納得をして帰路についた


あれ以来雨が降るとあの座席と女を思い出してしまう

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