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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)秘密基地


俺らが子供の頃はゲームなんてなくて大抵公園や校庭、空き地なんかで遊んでた


で、野山とか未開の地があれば探検して遊んでたんだがある日藪の中に一軒の廃屋を発見した

何かの工場と事務所兼住居?みたいな廃屋で工場エリアは孟宗竹が侵食してお手上げ状態だったけど

事務所の方はそれほど荒れてなくて椅子もソファーもそのまんま、勿論即日秘密基地に昇格した


多分梅雨前の頃だったと思うんだけど学校帰りに駄菓子屋に寄り食料を買い込んだ後で基地に向かうと先客がいた。

何処で嗅ぎ付けたのか、ホームレスっぽい風体で何か既に洗濯物とか入り口付近で干したりしていた

俺らはその段階で諦めて帰ったんだけど後から来た友達はそいつに文句言って逆に攻撃されたらしい

次の日学校で有志を募って奪還作戦なるモノが練られた。と言っても皆で棒を持って追い払うとか単純なヤツね


ホームレスだし基地○っぽいし構わない方が良いと提案したが既に「奪還作戦」と言う言葉に酔っていて聞く耳を持たない

決行は次の土曜日の半ドン授業の日、4時位に基地の近くの空き地集合に決定した


決行当日、曇天というか若干小雨も降る悪天候で予想していたより遥かに集まりが悪かった

ここでメインの登場人物を紹介しておく。

・正ちゃん(リーダー的存在)計画の発起人

・政やん(正ちゃんの相棒)

・俺

・ツボ(名前が坪○)お調子者

・他2名程

他のグループもあり、作戦に加わる予定だったが何やかんやで不参加になりこのグループになった


さて、幾ら作戦を練ったとは言え子供の戯れ言。実行に移すとなると色々と問題点が浮上してきた

先ず標的のホームレスが廃屋にいなかった

勢いが半分削げたが正ちゃんが先陣を切って基地に突入し、ホームレスの所有物を破壊する暴挙に出て

それに追従する形で皆破壊攻撃に夢中になった。とは言うもののホームレス故にそれほど物量はなく30分も持たなかった

破壊攻撃にも飽き、目標もいない。

作戦的にはもうグダグダで皆帰って別の遊びでもしようや、ムードになりつつあった

その時、破壊行為に乗り切れなかった後方の二人が弾け飛んだ


俺達が物音にビックリして振り向くとソコには怒りに震えたホームレスが棒を持って立っていた

「おめぇら、ふざけ×@#%¥&‼」

士気が下がっていた所での奇襲で総崩れになり棒でどつかれた二人を庇いつつ一目散に逃げた

「アイツ、許せねぇよ‼」

正ちゃんと政やんは自分達の行為を棚に上げてご立腹だ。

俺とつぼは先刻どつかれて号泣していた二人を見送って冷静になると基地は放棄せざるを得ない事実に気付き意気消沈していた


「なぁ、アイツ等の敵討ちしようぜ‼」

今考えればどう考えても大理不尽な屁理屈なのだが当時は正ちゃんの強い言葉は俺達のヒーロー心に火をつけた


夕暮れに一旦解散し、各々夕食等を済ませた俺達は再び元基地前の空き地に再集結した

ホームレスに気付かれない様に灯りも点けず忍び足で廃屋に近付くと外で夕飯?の準備をしている男の姿が見えた

草むらで暫く観察をしていると男の行動がどうも怪しい。

どうやらへべれけに酔っていた様でフラついたり奇声を発したりしている


「正ちゃん⁉」

政やんとつぼが同時に叫ぶ。声のした方向を見ると正ちゃんが男に向かって歩きだしていた

慌てて正ちゃんの後を追うとその先に腰が抜けたのか立てずにニヤニヤしている男がソコにいた

何がきっかせだったのだろうか?

正ちゃんは身近にあった棒切れを拾い上げると「○○の敵‼」と言い男の肩口付近に棒を振り下ろした

男は一度「ぎゃあ‼」と言ったがその後はヘラヘラしている

正ちゃんは無言で棒を振り下ろしている

何度目かの後、正ちゃんは政やんにその棒を渡した。

政やんも無言で何度か振り下ろし今度は俺に渡してきた

穿った正義感で麻痺していたのかも知れないが俺達は順繰りに棒切れをホームレスに振り下ろし、義憤を晴らした


翌日から秘密基地に男の姿はなくなった。それ以降俺達がその廃屋を基地として利用する事はなかった

霊的な話でもないしオチがある訳でもないが集団心理?という人の恐怖を恐ろしく感じた一件だった

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