(霊)光
あれは小学校高学年になったばかりの頃だったかな
今では開発が進んで宅地や店が建ち並ぶ高台も当時は雑木林に囲まれた沼地だった
当時釣りがブームだったので放課後沼に向かうと入り口にロープが張られていたので
友人Aがロープを跨ごうとしたら音速で作業着のオッサンが飛んできてしこたま怒られた
意気消沈した俺達は仕方なく近くの川で釣りをしてその日は終わった
翌日の学校では沼の話で持ちきりで噂では沼を埋めて何か作るらしいとの事
Aは土日を利用して主(大ナマズ)を捕獲案を提唱したが夜決行と聞いて大半は諦めた
結局Aの他に俺を含めた三人しか参加出来ず更に1人が親にバレたらしく3人だけで決行となった
真っ暗な砂利道を50m程進むと更に黒さを増す畔へと辿り着き
早速針にエサを付け何度か放り投げたが一向に釣れる気配がなかった
「誰か来るぞ‼」
Aの声に驚き彼の見ている方向に振り向くと小さな光が近づいてくる
また見つかったら今度はただでは済まないと思った俺達は手近な草むらに身を潜ませた
どうもおかしい、光はある程度近づいてきたが一定の距離まで来て揺れているだけだ
(もしかしたら怪しんだオッサンが確認しに来ただけでその内引き返すかも知れない)
そんな淡い期待を胸に草むらで息を潜める
ゆら…ゆら…すぅ…
(…ほっ、行ってくれたか…)
…ぎゃああああっ‼
突然隣にいたもう1人の友達が釣り道具も持たずに走り出した
「ちょっ、なっ!?」
俺もAも訳も分からず恐怖に駆られて一緒に走り出す
先頭を行く友達は俺達を気にする様子もなく自転車に跨がりそのまま全速力で立ち去った
俺達も仕方なく後を追うと彼は近くの街灯付近にあった自販機の前でスッ転んだ
「一体どうしたんだよ?」
やっと追い付いた俺達は彼に尋ねた
「見えなかったのかよ?あれ」
「?」
「懐中電灯じゃなかったんだよ‼人の顔だ、ありゃ‼」
彼の恐怖心からそう見えたのか本当に顔だったのかは未だ不明だが
あれから数十年経った今でも彼はその話でイジられている




