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(人)ピピピ
話は学生時代、彼女との同棲時代迄遡る
寝起きが悪い俺は彼女のアパートのベッド脇にも3つの目覚まし時計を設置したが
最終的に目覚ましで起こされた彼女に叩き起こして貰うという日々を送っていた
彼女からしたらさぞ苦痛だったのだろう、次第に朝は険悪ムードが流れる様になった
ある日、奇跡的に目覚ましの電子音で目が覚めた
たまにはこんな事もあるか、と軽くまどろんでいると目の端に台所に立つ彼女が見えた
あぁ、俺の為に朝食作ってくれてるのか…
とボンヤリ眺めていると様子が違うのに気付いてしまった
3つ目の目覚ましの電子音が鳴り響く中、無表情な彼女がぬいぐるみを殴っている
寒気を覚えた俺はあくまで今起きた体で「おはよう」と彼女に言うといつもの彼女に戻った
その日を限りに実家に戻り同棲も交際も解消した
あれ以来ピピピ…という電子音を聞くと恐怖心からかどんなに寝不足でも起きてしまう
ある意味ありがとう




