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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(謎)こんぴら様


小さい頃、我が家に来客が多い時期は手が届かないという事で親戚の家に預けられたりしていた


あれは小学校低学年の頃だったと思う。


親父の生家で正月を迎えた俺は数日をどう過ごそうか悩んでいた


と言うのも俺の家も大概だが生家は更に「ど」が付く程田舎だからだ


周囲には田畑しかなく、子供が遊ぶ施設など望むべくもない

更に三が日も加味されて表に出ても人すら見かけない程で正直死ぬ程退屈だった


そんな気配を察してか叔母が


「俺君、こんぴら様にお参りに行くかい?」


と言ってくれたので速攻で頷いた


叔母は同い年の従弟と俺を車に乗せると暫く田舎道を走り、多少開けた田舎道へと車を進めた

幼かったからか道中寝ていたからか記憶が定かではないが暫くすると車は山裾にある民家の庭に到着した


ここからは歩いて山頂にあるこんぴら様を目指すという


三が日の賑わいを期待していた俺は思いっきり後悔した。


何故ならその民家の庭からそのこんぴら様への入り口迄は人混みはあるものの楽しみにしていた露店が一つもなかったからだ


既にやる気ゼロだったが折角来たのだから完遂せねば!と気持ちを切り替え叔母達の後を付いていった


山の麓迄来ると石で出来た鳥居があり、上を見てみると参拝客が狭い斜面の道を譲り合いながら登り下りをしていた


一つ目の鳥居をくぐって直ぐ何故か突然吐き気に襲われた


吐き気は次第に強くなり二つか三つ目の鳥居をくぐる頃には我慢が出来るレベルではなくなり

仕方なく人通りがないであろう斜面に向かってゲーゲー吐いた


当時人見知りが激しく、気恥ずかしい事を他人に見せるなどもっての他だった俺が周囲を気にする余裕もなく

あんなに吐いた事も経験がない程盛大に吐いた


山頂が近づくにつれ吐き気も徐々に収まったのだが意識は朦朧としていてどうやってたどり着いたかすら覚えていない


そんな苦行?もとうとう終わりを告げる


山頂には鐘つき堂があり、参拝客が一回ずつ鐘を衝いては拝んでいる

叔母達と俺も順番を待って鐘を衝いた

その後、どう帰ってきたのかも何をしたのかも残念ながら記憶にない


そんな苦い経験をしてから相当の年月が流れ、俺も従弟も酒を酌み交わす程の年齢になった

ある日、従弟と酒を飲んでいた時にふとこんぴら様の事を思い出し


「あの日は本当に散々だったなぁ」


と話題を振ると従弟が不思議な顔をしている

そんな所へ行った事なんて一度もない、と言うのだ


そんなバカな、と俺は覚えている限りの記憶を話したがそもそもこんぴら様を知らない、と言う


従弟の記憶違いの可能性も?と思い当時誘ってくれた叔母に墓参りの時を見計らって話してみた


すると…やはり連れて行った覚えはないしこんぴら様というのも知らないと言う


もっと思い出して貰おうと努力したのだが実は車にこんぴら様がある山の麓に着いてからの記憶が曖昧なのだ


あの日、一体誰と何処の「こんぴら様」に行ったのだろうか?

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