表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

5話

この話で序章的な部分は終わります。


先に言わせていただきますとこれだけイチャイチャしておりますが、二人は付き合っておりません。


付き合うとはなんでしょうかね……笑

 今日は高山さんとの約束の日。

 少し事件はあったけれど無事解決し、モヤモヤしていたものも取れ気持ちよく土曜日の朝を迎えることができた。


 今日はいつも頑張っている高山さんにリラックスしてもらおうという事で電車で一時間程乗って大型の複合施設に行く予定だ。


 親父からいつもより多めにお小遣いもらえたし、中学生の時もお小遣いをもらっていたが特に使う事もなく貯めていたのでそれなりに懐は潤っている。

 

 親父には今週は休ませてほしいといったら「楽しんでこいよ」と言われた。

 気づかれていたのだろうと俺は電話越しで顔を赤くして恥ずかしくなってしまった。


 鼻歌を口ずさみながら外へと出ると雲一つない空が広がっており、絶好のお出かけ日和となっていた。

 俺は、スキップしそうな程に軽い足で高山さんと待ち合わせしている駅の前の時計台へと足を運ぶ。


 約束の時間は9時集合。

 そして只今の時刻は8時30分。


 気分が高まり10分前につく予定だったが30分前にきてしまった。


 時計台が見えてきたところで同時に高山さんも発見した。

 肩まで伸びた髪の毛を手でくるくると触りながらきょろきょろと周りをみている。


 高山さんも早く来ていることに少しドキッとしていた。


「おはよう! 高山さん!」


 いつも話をしているのに何故だか緊張しながら、俺は高山さんに声をかけた。


「おはよう! 神崎くん!」


 俺が声をかけるとぱぁっと笑顔になりこちらを振り向いた。

 そんな表情をみてまたドキッとした。

 服も季節にあった薄いピンクと白でコーデされており、とても似合っていた。


「ごめんね。待たせちゃったかな?」

「ううん。今来たところだよ!」

「そっか!」


 そして二人の間に静寂が流れる。

 周りの人の声がかき消されるくらいに自分の心臓の鼓動がうるさく感じた。


「い、いこっか」

「う、うん!」


 少し気まずい雰囲気になりながら俺たちは駅の中へと向かう。


「あ、そういえば神崎君、今日どこに行くか聞いてないんだけど……」


 高山さんにはどこに行くか知らせていない。

 別にサプライズとかそういった事をしたいわけではなく、特に理由はない。


「最近できた大型の複合施設に行こうと思う」

「あぁー! 私一回行ってみたかったんだ!」

「ならよかった! さぁ行こうか」


 そういって俺の分と高山さんの分の電車の切符を買い切符を高山さんに渡した。


「え?」

「ん?」


 高山さんはどこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 もしかして切符を買ってもらった事を申し訳なく思っているのかな。


 だとしたら困る。

 今日は高山さんに一銭もださせるつもりはないのだから。


 正直、親父の手伝いをしてお小遣いが増えたら高山さんに金銭的に支援しようと思っていた。

 でも、お金を渡しても高山さんは断固として拒否することは目に見えている。


 それならこうして高山さんに楽しんでもらえることでも支えになるのではないかと考えた。


「さぁ、行こうか」

「え……でも!」


 半ば強引に俺は高山さんを連れて改札を通った。


「これは俺が高山さんにこの一か月楽しませてもらえたお礼なんだ」


 ホームで電車を待ちながら俺は高山さんにそう言った。


「私こそ楽しませてもらってる! それに私は昔……」

「じゃあ!」


 高山さんがそこまで言ったところで俺は言葉を遮るように言った。


「高山さんが迷惑だと言うのなら、これは俺の復讐だと思ってくれたらいい」

「そんな……ずるいよ」

「俺はずるい人間だからね」

「ほんとにね!」


 そう言った高山さんの笑顔は先ほどまでの申し訳なさそうな顔ではなく、素敵な笑顔になっていた。 


 電車に揺られること1時間。

 目的地がある駅へと着いた。


 駅をでると目の前に見える視界に収まりきらないほどの大きな建物がある。

 それが今日の目的地。


「思っていたよりでかいねー」

「うん」


 予想より大きな建物と人の多さに圧倒されながら、俺たちは建物の中にはいる。


「とりあえず色々なお店があるから見て回ろうか」

「うん!」


 最近流行り(噂に聞いただけ)のお店から昔からある有名な主にアパレルのお店が並んでいた。


 ある程度お店をめぐっていると高山さんがあるお店のショーウィンドウにあった花柄のワンピースを眺めていた。


「かわいいなー」


 高山さんは小さくそう呟いていた。


「かわいいね。一回試着してみたら?」

「そうしよっかな」


 お店に入り店員さんに案内をしてもらい試着室へと向かった。

 高山さんは服を店員さんから受け取り試着室へと入っていった。


 待ってる間、試着室から服を脱ぐような音が聞こえてきてドキッとしてしまう。


「ど、どうかな」


 振り向くと試着した高山さんが少し顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。


「うん! 似合っているよ!」

「そうかな」

「じゃあそれは僕からのプレゼントッてことで!」

「え? でも……」

「店員さん。これください!」

「はーい!」


 また申し訳なさそうにする高山さんを無視した。


「素敵な彼氏さんですね!」

「か、かれし……!?」


 ワンピースを高山さんから受け取った店員が高山さんに向けて笑顔でそう言った。

 同時に高山さんは耳まで真っ赤にしてあたふたしていた。


「ありがとうございましたー!」


 不気味なくらい笑顔の店員から商品を受け取って店を出る。


「あ、あの……ありがとう」


 上目遣いでそういう高山さんに少しドキッとすると同時にこんな高山さんがみれるのならばこれくらいのプレゼントいくらでもすると思った。


「つ、次いこうか!」


 照れ隠しをするために高山さんから視線を逸らした。


 次に向かった場所は下調べした時に俺がちょっと行きたかった場所だ。


「お、お化け屋敷?」


 そう、お化け屋敷。

 なんでも気絶する人がでるくらい怖くて今人気急上昇らしい。

 そんなに怖いなら一度は行ってみたいと思うだろう。


「ちょっと気になっていたんだ! 高山さんは嫌かな?」

「い、嫌じゃないよ……」


 乗り気じゃないのは目に見えてわかるがそれで俺は引き下がらない。

 むしろなんとしてでも連れて行こうと思った。


「じゃあ、いこっか!」

「神崎君……笑顔がなんか怖いよ」

「そんなことないよ! さぁれっつごー!」

「うぅ……」


 中にはいると流石言われてるだけあって雰囲気も怖く、何か出てこなくても雰囲気で十分怖い。

 小さな物音が周りから聞こえてきて、遠くからぎぃーという床がきしむ音がなったりしていた。


 高山さんは俺の腕をぎゅっと掴み、体を縮こまらせ、びくびくしながら周りをきょろきょろしていた。


 そして、少し歩いたところで、道の端の段ボールの中に赤ちゃんの人形らしきものがおいてあった。


 その人形は少し汚れており、顔をしたにむけていた。


 無視すればいいものを気になってしまい赤ちゃんの人形に近づくと小さく声が聞こえてきた。


「お母さんはどこ……」

「なんか聞こえる?」

「こ、この赤ちゃんから……?」


 そしてもう一歩俺たちは人形に近づく。

 すると


「お母さんどこ!!!」


 下を向いていた赤ちゃんの人形はばっとこちらをみて大きな声でそう言った。


「きゃあああああああああああああああああ」

「うわああああああああああああああああああ」


 俺たちは怖くてがむしゃらに出口に向かって走った。


 気が付けば外にでていて、店員さんが笑顔で迎えてくれた。


「ありがとうございましたー! 楽しんでいただけたでしょうか?」

「「は、はい……」」


 完全に腰が抜けてしまった俺たちはしばらくそこから動くことができなかった。




 少しして動けるようになった俺たちはお腹が空いたという事で、これもまた噂ですごくうまいというオムライスのお店のきた。


 座って気づいた。

 周りには家族連れもいる。

 しかし、断トツで多いのはカップル。

 それもめちゃくちゃイチャイチャしているカップルが多い。


 俺たちはイチャイチャカップルに挟まれたテーブルに案内され座ったのだ。


 何故だか変な雰囲気になり、俺たちはしばらく話すことなく気まずい雰囲気が続いた。


「注文の品になります」


 その雰囲気を破ったのは店員さんが商品を運んできたときだった。


「うわ! おいしそー」

「ほんとだ!」


 ふわふわの卵にほんのりと香るバターが食欲を掻き立てた。


 気が付けば俺達はオムライスを平らげていた。


「美味しかったね」

「うん。噂通り美味しかった」

「今度は私がオムライス作ってあげる!……なんてね」

「高山さんの作ったオムライス食べたい!」

「う、うん!」


 そしてまた二人の間に気まずい雰囲気が流れた。

 もしかして恥ずかしい事をいってしまったのではないか。

 こんなやり取りするなんて


「恋人……」

「え?」


 高山さんがぽつり呟いたその言葉を俺は聞き逃さなかった。


「い、いや私たちも恋人同士にみえてるのかなーなんて! あれ?私なに言ってるんだろ! ごめんね」

「そ、そうだね! はははは」


 高山さんの顔が一気に赤くなっていくのが見えたが、俺の顔もすごく熱いことからおそらく俺の顔も赤いのだろう。


 いつも以上にぎこちない俺たちだったが、ご飯を食べてからちょっとお店を回ったり室内スポーツをしたり等、笑顔の絶えない時間を過ごした。


 そして、日が沈みかける前。


 屋上からの景色が綺麗と言われてるので俺たちは屋上に向かった。


「きれーい!」


 その景色に高山さんは感動していた。

 もちろん俺も。


 町全体を見渡せ、夕焼けが更に雰囲気をよくしていた。


「神崎君! 今日は本当にありがとう!」

「うん! 楽しんでもらえたなら俺はうれしいよ」


 そして二人並んで町を眺めながら静かな時間が流れた。


「ねぇ。私はこれからも神崎くんと一緒にいていいのかな」


 高山さんはふとそんなことを言った。


「当然だよ。むしろ俺の方からお願いする」

「これからもたくさん迷惑かけるかもしれないし、頼るかもしれないよ?」

「どんどん迷惑かけてほしいし、頼ってほしい」


 今なら確信をもって言える。

 俺は高山さんから頼られたいし、頼ってほしい。

 

「ありがとう! じゃあ神崎君! 改めてこれからよろしくね!」


 夕焼けに照らされた高山さんのその笑顔は今までみた笑顔で間違いなく一番だった。


 そう、そんな笑顔をこれからも見たくて――


 

 帰りの電車にて。

 二人は疲れたのかぐっすりと眠っていた。

 仲良く肩を寄り添い合わせて。

 


ここまで読んでいただきありがとうございます!

よければ感想やご指摘お願い致します!


また、ブックーマーク登録もしていただけると嬉しいです!


こうした方がいいよ!っていう感想も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ