31話
私情で申し訳ないのですが、今日から更新頻度を少し下げます。おそらく2.3日に1度ペースになる予定です。申し訳ございません。
12月26日
絵美のバイトも1月5日まで休みらしく、今日も俺の家へと来ていた。
絵美の家を出る時家族の人たちに色々いじられていたが最後には開き直っていた。
しかし、俺の家にきてからというもの絵美はずっと俺の横に付きっ切りである。
俺としては嬉しい事に変わリないのだが、これだけずっと近くにいると心臓が早く動きすぎて壊れてしまいそうだ。
かといって、家に帰ってなにかするわけでもなく、二人してだらだらしていると俺のスマホに着信が入った。
俺は急いでスマホを手に取り電話に出る。
「もしもし」
「もしもし春人か」
「親父か」
「急だが、今日春人のところに母さんいくらしいから覚悟しておけよ。じゃあ」
「え? ちょ……」
親父は用件だけ伝えるとすぐさま電話を切った。
別にこれが明日くるとかなら分かるが、よりによって今日。
しかもあの母さんが来る。
「どうしたの?」
これは一大事だと焦っていると絵美が不思議そうにそう言った。
ていうか母さん帰ってくるの年末年始って言ってなかったか。
もう年末年始にはいるのだろうか。
勝手に28日以降と勘違いしてしまっていた。
「い、いや、今日母さんがここに来るって……」
「春人のお母さん? いいじゃん私も一度お会いしたいかも」
「べ、別にいいけど……」
あまり気は進まなかった。
さて、どうしようかと慌てているとまた俺のスマホに着信が入った。
「もしもし」
「春ちゃーん! 私よー! マンションの前に来たからあけてもらっていいー?」
俺の思考回路は3秒ほど止まった。
予想を遥かに超える速度で母さんはここにきた。
親父から電話が来てまだ5分も経ってない。
「か、母さん来たって……」
俺は絵美にそう言った。
「そうなの? 私いたら邪魔かな?」
「いや、それは大丈夫だけど」
俺は覚悟を決め、部屋の鍵を開けた。
「春ちゃーん! 久しぶりねー!」
母さんは部屋が空くと同時に入ってきて俺に抱き着いてきた。
そして俺にすごい勢いで頬刷りをした。
「ひ、久しぶり母さん……」
この通り、俺の母さんは極度の親ばかである。
絵美は状況が飲み込めずあたふたしていた。
無理もないだろう。
「あら? この子は?」
俺にひとしきり頬刷りをした後、ようやく絵美の存在に気付いた母さんはそう言った。
「高山絵美と言います。えっと……春人くんとは……その……」
絵美は顔を真っ赤にしてそれより先を言う事ができなかった。
「あらあら……春ちゃんももうそんな年頃なのね……こんな可愛い子捕まえちゃって」
捕まえたなんて言うな。
それにしても我が母親は相変わらずであった。
「まぁ春ちゃんもかっこいいもんね。それにしても絵美ちゃん? だっけ。よく春ちゃんと付き合えたわね? なかなか難しかったんじゃない?」
難しいって攻略みたいな言い方するなよ。
なんて思いながら俺は絵美の返事を少し気にしていた。
おそらく俺はたくさん我慢させてしまった。
だから、その点を絵美はどう思っているのか気になっていた。
「はい……色々ありましたけど、春人が私を選んでくれたので……その……よかったです」
そこまで言って絵美の顔はぼふんという効果音が聞こえてきそうなほど顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
「あらあらー。初々しいわね。これは付き合い始めたのは最近ね……クリスマスとか?」
「な、なんでわかるんだよ!」
「勘よ勘!」
女の勘というやつか?
同じ人間とは思えない。
「あ、お父さんもこの後来るって言ってたし絵美ちゃんも一緒にご飯行く?」
「え? 親父来るなんて聞いてないけど」
「そりゃ言ってないものー」
親父さっきの電話した時もくるなら来るって言えよ。
「わ、私が一緒にしてもいいんでしょうか?」
「当たり前よー。将来、私の事お義母さんと呼ぶことになるんだから、今のうちに親睦を深めておかないとね。なんなら今から言ってもいいのよ?」
またも絵美は顔を真っ赤にした。
母さんは一度走り出すと止まらない人だからな。
もう俺は止めることも突っ込むこともやめた。
いや、諦めた。
それから、家で夕方の17時くらいまで話していると親父から電話がきて車で来たから出てきてくれと言われた。
あたかも当たり前のように電話してきたが、俺は親父が来るなんて聞いてないからな。
絵美もいいかというと親父も笑顔で了承した。
その後、車で20分ほどかけたところにあるよさげな海鮮料理店へと入った。
「それで、春人から告白したのか」
席に座り親父が発した第一声がそれだった。
「そ、そうなるのかな?」
「は、春人からです……」
俺達は2人顔を赤くしながらそう答えた。
親父には付き合い始めたなんて言ってないが、絵美も一緒にご飯いいかなんて聞いてる時点でバレてたのだろう。
「初々しくていいねー。母さんとの昔を思い出すよ」
「昔は2人はこんな感じだったの?」
「いや、私はそんなだったけどお父さんは私に夢中だったわね」
「いや、君の方が俺に夢中だったね!」
「いや、あなたの方が!」
そういえばこの2人極度の負けず嫌いなのを忘れていた。
「わ、わかったから……」
俺は呆れた感じで2人を鎮め、なんとか元に戻った。
それから親父は車という事で、酒を飲まなかったが母さんはすごい勢いで日本酒を飲み始めた。
「やっぱり日本酒と刺身は最高ね。日本サイコー!」
母さんは酒に弱いくせにたくさん飲みたがる。
それも度数が高い日本酒をだ。
もちろん今のようにあっという間に酔ってしまうのだが。
「それでー! 絵美ちゃんは春ちゃんのどこがよかったのー?」
べろんべろんになりながら母さんはそう言った。
ちなみに母さんがこの状態になると親父はもう何も言わなくなる。
触らぬ神に祟りなしだそうだ。
「えっと……優しいし、努力家だし……き、嫌いなところが……ないです」
「ひゅー! いいわねー! あなたもこれくらい言ってほしいものね!」
「そ、そうだな」
今の親父は多くは語らない。
自分への被害を最低限に抑えるために。
それから酔った母さんをなんとか抑えながらご飯を食べおえ店を出た。
俺と絵美をマンションに送った後、親父と母さんは親父の住むところに行く為別れることになった。
「じゃあな、2人とも。あ、2人きりだからってあまり夜遅くまでイチャイチャしちゃダメだぞ。ほどほどにな」
「あ、ああ」
そういって親父とは別れた。
母さんは車の後ろで酔いつぶれ眠っていた。
「な、なんかすまなかった……」
「楽しい家族じゃない! 私は楽しかったよ!」
「そう言ってもらえると助かるよ」
結局この日は母さんの親ばかっぷりと酔いの悪さが露呈しただけの会となった。
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