29話
クリスマス回。
現実ではまだ4月
クリスマスイブ。
雰囲気よく雪まで降っていた。
ホワイトクリスマスというやつだろうか。
俺は絵美と夕方の5時に駅前に集合の約束をしていた。
30分前に俺は到着し、絵美を待っているところだ。
「お待たせー」
待つこと20分。
茶色のコートに身を包んだ絵美がこちらに向かって走ってきた。
「大丈夫だよ。俺もちょっと前に来たところだから」
絵美と合流し、とりあえず街中へと行くことにした。
街中はたくさんの人がいた。
中でも恋人同士、そうカップルが多かった。
俺たちもそう見えてるのだろうか。
街に行った俺たちは、あてもなく色々なお店を1時間ほど見回った後 予約していたお店へと向かう。
イタリアンでおしゃれな雰囲気であるが、値段もそこまで高くない、もちろん学生からしたら痛手だが今日くらいは奮発しなければならない。
「ここ……いいお店なんじゃない?」
絵美は戸惑いながらそう言った。
「別に大丈夫だよ」
そう言って俺と絵美は店員に誘導されお店へと入った。
俺はなるべくいつもと同じように、いつも話すような他愛もない話題を振った。
絵美も笑顔でそれに応えてくれて、周りからみたら俺たちは完全にカップルだったと思う。
でも、俺たちはまだ付き合ってない。
お店で1時間と少しが経ち、俺達は店を出ることにした。
「ありがとう!」
店を出ると絵美は笑顔でそう言った。
「おう!」
そして、俺たちは街にある広場へと向かった。
広場の中央には大きな木が植えられており、木にはイルミネーションが装飾されておりクリスマスらしい雰囲気を出していた。
俺と絵美は広場にあるベンチへと座った。
周りにはたくさんのカップルが行き交う中、俺達の間には若干の静寂が流れた。
そこで、俺は大きく深呼吸して覚悟を決めた。
長い間溜めていたこの気持ちと別れを告げる覚悟を。
「なぁ絵美」
心臓の鼓動が段々早まる中、俺は絵美の方を向いた。
そして俺は目を見開いた。
絵美が泣いていたのだ。
「ど、どうしたんだ絵美?」
「ごめん、こんなつもりじゃなかったんだけど。もう我慢できなくて……」
我慢……できなくて?
それは一体どういう意味だ?
「私が悪いのに……私が頑張らないといけなのに……」
絵美が何を言おうとしてるのかわからない。
それでも、俺は絵美にそれ以上言わせてはいけない。
そう思った。
気づけば俺は絵美を抱きしめた。
「え?」
「好きだ」
その言葉、思ったよりすんなり出てきた。
絵美は何も言わなかった。
ただ俺を強く抱きしめ返し、更に涙を流していた。
「うん」
「好きだ。絵美の事が好きだ」
「うん……うん」
「だから、俺と付き合ってほしい」
すると絵美は俺から離れ涙を手で払い笑顔で言った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
よろしくお願いします。
目を赤くしてそう言う絵美の言葉を俺はしばらく理解できなかった。
そして、数秒後。
脳内で理解すると共に、抑えきれない感情が込み上げてくる。
「よっしゃあああああああ!」
街中で俺は叫んだ。
周りの目なんて気にしなかった。
ただ、この喜びを表現せずにはいられなかった。
「やめてよ、恥ずかしいよ」
絵美は顔を赤くしてそう言った。
そして俺はカバンからあるものを取り出した。
「本当は告白する前に渡そうと思ったんだけど、これ」
俺は赤い紙に包まれた箱を絵美に渡した。
「空けてもいい?」
「おう!」
絵美は箱の中身を空けると、少し驚いていた。
「弁当箱?」
そう、弁当箱である。
「クリスマスに女の子にプレゼントするものなんて俺にはわからなかった。だから俺と絵美の思い出で印象深かったものをプレゼントしたかったんだ。ごめんなそんなもので」
「いや、最高のプレゼントだよ」
絵美に送ったのは黄色の弁当箱
俺も色違いの赤の弁当箱を買っている。
「じゃあ、次は私から」
そう言って絵美は袋を取り出し俺に渡した。
「空けてもいいのか?」
「うん」
袋の中身を見るとマフラーだった。
手に取ってみるとわかった。
「もしかして、手作り……か?」
「マフラーなんて作ったの初めてだから出来が悪いかもしれないけど」
俺は、そのマフラーをすぐに今つけてるマフラーと取り換えた。
同時に涙があふれてきた。
自分でも驚くくらい自然にその涙は溢れてきた。
「あったけぇよ」
「もう……何泣いてるのよ」
そう言った絵美もまた泣いていた。
俺たちは様々な思いに悩み、決断し無事結ばれた。
その思いがここにきて込み上げてきた。
まだスタート地点にたっただけなのに、これ以上にない幸福感に包まれていた。
降り続ける白い雪がまるで俺たちを祝福してくれてるようなそんな気がした。
***
俺と絵美は自然と手をつないでいた。
相変わらず緊張する。が、昨日までの感じとは違って気持ちのいい緊張感だった。
2人でどこに向かうと話した訳でもなく、ただどこかへ歩いていた。
そして気が付けば、俺のマンションの前に来ていた。
そこで俺は我に返った。
この日に俺の家で2人きりというのはすごくまずいのではないだろうか。
それに俺たちはもう恋人同士だし、そう言ったこともこれからするかもしれないとは思っていたがまさか今日とは思ってなかった。
そんな思いを無視して俺と絵美は俺の部屋へと足を運ぶ。
もちろん俺の部屋へと向かってるわけでそのまま俺の部屋と到着し、案の定俺と絵美の2人きりの空間になった。
「そ、その春人……」
荷物を降ろし、コートを脱いだ絵美は顔を少し赤くして俺の方を見てそう言った。
「な、なんだ?」
「そ、その……私達、恋人同士……なんだよね?」
「あ、あぁ」
まずいまずいまずい。
この流れはいけません。
と、思ってるはずなのにどうしてこんなに俺の体はうずうずしているんだ!
「じゃ、じゃあさ……キス……したいな」
「キ、キスな」
このままいくところまでいってしまうのだろうか。
そう思っていると絵美は俺の方を向き目を閉じた。
流石の俺でも知ってる。
これはキスをしてくれというサインだ。
俺は、戸惑いながらも絵美の唇に自分の唇を合わせた。
その瞬間、体全身にビビっと何かが走った。
同時に頭の中まで蕩けるような感覚に襲われる。
少しの間唇を合わせ、俺たちは離れた。
「な、なんか癖になっちゃいそうだな……」
絵美は少し笑いながらそう言った。
しかし、その気持ちはわからなくもなかった。
「もう一回……いいかな?」
そう言った絵美はいつもに増して色気が増してるように見えた。
俺はもう一度絵美とキスをした。そのままベッドへと押し倒した。
キスをやめ、10秒ほど見つめ合ったのち、俺は絵美の服へと手を伸ばした。
「ご、ごめんなさい!」
そう言って絵美は手で俺を体から遠ざけた。
俺の頭の中は、後悔という文字が周り続けていた。
「お、俺のほうこそごめん!」
「い、いや。その……まだ心の準備ができてなくて……」
そうだよな。
ついさっき俺たちは付き合い始めたばっかりだ。
それでいきなり、というのはどうかと冷静になればわかることだった。
「そ、その。今日はそこまでできないけど、もう一回だけ……キス」
絵美は更に顔を赤くしてそう言った。
俺はもう一度絵美と優しいキスをした。
これでいい。
急ぐことはない。
俺たちのペースで進んでいけばいい。
これからいくらでも時間はあるのだから。
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