3話
ジャンル別の日間ランキングに載る事ができました。
このような事は初めてで驚き、感動しております。
また、なんと感想までいただきました!
読んでいただいた上に感想までいただけるなんてこれほど嬉しい事はありません。
稚拙な文章にも拘わらず読んでいただき本当にありがとうございます。
そしてこれからもよろしくお願い致します。
俺と高山さんの密かな関係が始まって1か月。
同時にこの学校に通い始めて1か月が過ぎようとしていた。
俺は、高山さんと仲直りをしたその日に親父に電話をしてあるお願いをしていた。
「春人くーん。次これやってもらっていいかなー」
「はい!大丈夫です!」
土日のどちらかだけだが、親父の会社の手伝いをすることにしてもらえた。
システム管理、また問い合わせ等の理由から土日勤務があるが、どうしても土日は人手が薄くなってしまうというのを中学生の時に親父が電話で話しているのを盗み聞きしていて、雑用でもいいから手伝わせてもらえないかとお願いしたのだ。
親父も何故いきなりそんな話をするのかと疑問に思っていたが、どうにか押し切り今こうして親父の職場にきている。
初めは日本の各地にある支社に発送する資料をまとめたりしていたが、最近ではツールを使って簡単な作業をさせてもらえるようになってきた。
といっても手順書通りに進めて土日当番の人に確認してもらっているのだけど。
それでも、当番の人に感謝されたりすると嬉しいし頑張ろうと思える。
そして今日も無事、手伝いを終えて親父のいる社長室へと向かった。
「親父、今日も無事終わったよ」
「そうか。ご苦労さん。先週からツールを使わせてもらってるらしいじゃないか」
「そうなんだ! 乙武さん本当に優しい人で教え方も上手なんだ」
「そうか! おまえがそういってるのを聞いたら乙武さんも喜ぶかもな」
「流石に直接は恥ずかしくて言えないかな」
そして親父の仕事が終わるのを待って駅まで送ってもらうことにした。
親父の会社は今住んでるマンションからだと電車で大体1時間半ほどかかる。
朝も学校に行く時よりも早く起きないといけない。
近場でアルバイトするかと一瞬頭によぎったけれど、俺の学校はアルバイト禁止だし親父の職場を見てみたい気もしたからわざわざ電車で時間をかけてここまできている。
「なぁ春人」
「なんだよ親父」
親父の車で駅まで送ってもらってる最中、親父が突然問いかけてきた。
「学校は楽しいか」
「楽しいよ。今までで一番楽しいかも」
自分でも驚く程、すんなりその言葉はでてきた。
同時に高山さんとお昼ご飯を食べてることを思い出した。
もしかすると俺はあの時間を心の底から楽しんでいるのかもしれない。
高山さんはどうなのだろうか。
そんなことを思った。
「そうか。ならよかった」
親父は二カッと笑った。
「なんだよそれ」
二人して笑った後、他愛もない話をして駅に着いた。
「近々マンションに顔をだそうと思う。また詳しい日時は連絡する」
「わかったよ」
そのまま俺と親父は別れた。
電車に揺られながらウトウトしていると、スマホから通知音がなる。
『アルバイトお疲れ様!明日は神崎君が好きなハンバーグ入れるから楽しみにしててね!』
スマホに映し出されていたのは高山さんからのメッセージだった。
高山さんとLUINというSNSアプリで連絡先を交換してから毎日のように連絡を取り合っている。
内容は本当に他愛もない内容だが、不思議とやりとりが続く。
『楽しみにしてるよ! 来週の土曜日って空いてるかな?』
親父の手伝いをする代わりに給料という訳ではないが、お小遣いを多くもらえるようにしてもらえた。
そのお金でいつも頑張っている彼女にリラックスしてほしいと思ったから、思い切って遊びに誘ってみた。
『来週の土曜日は丁度バイトも空いてるしいけるよ!』
『わかった! じゃあその日は空けといてもらえると助かる』
『うん! 楽しみにしてるね』
彼女の予定を抑えることができて安堵したのか、そのまま俺はゆっくりと目を閉じて眠りについた。
電車で寝た後、どうやって家に帰ったのか覚えていないが気が付けば自宅のベッドの上で朝を迎えた。
今日は彼女のハンバーグが食べれる。
ワクワクが今から止まらないなか、俺も彼女が大好きな卵焼きを作る。
月曜日だというのに気分がいい。
だが、そんないい気分もすぐに終わってしまう出来事が待っているなんてその時の俺はこれっぽっちも考えていなかった。
学校に登校するといつもより少し騒がしい気がしたが気のせいだろうといつものように席に座り、空席の彼女の席をボーっとみていた。
しかし、HRの予鈴がなってもその席が埋まることはなかった。
この一か月遅刻も欠席しているところも見たことがない。
体調不良なのかと思いLUINで彼女にメッセージを送る。
『おはよう! もしかして体調悪い?』
そのメッセージはお昼休みになっても既読になることはなかった。
嫌な予感がした俺は川崎に彼女について聞いてみた。
「なぁ川崎、高山さん体調不良で休みなのか?」
「神崎知らないのか。高山さんなんか1週間停学になったらしいぞ」
「は? なんで?」
「理由はわからないなー」
相変わらすメッセージも既読にならない。
いてもたってもいられなくなった俺は急いで帰る支度をして学校を出る。
「すまない川崎。先生にはめちゃくちゃ頭痛くなったから早退すると伝えおいてくれ」
「はいよ」
「やっぱりあの二人出来てたんだなー。怪しいとは思っていたけど。頑張れよ神崎」
全力疾走で彼女の家へと向かう。
ほぼ毎日走りこんでいるのにいつもより心臓の鼓動が早くなっている気がする。
アパートにつき彼女の住む部屋の扉に向かって声をかける。
「高山さんいるんでしょ! ここを開けて!」
しかし、声は帰ってこない。
もしかして家にいないのか?
と思い、ドアが閉まっているか確認するためにドアノブをまわすとドアが開いた。
勝手に入るのは悪いとは思ったが、それどころではない。
「はいるよ」
そう言って部屋に上がると彼女は布団にくるまっていた。
「なんではいってきたの」
泣き声で彼女はそう言った。
「わからないよ。でも高山さんLUINも返してこないし、その……一週間停学ってきいて……」
俺がそういうとバッと布団から出てきて俺に抱き着いてきた。
「どうしよう高山くん。アルバイト見つかっちゃったよ……私、どうしたら……」
俺の胸に顔を埋め泣きじゃくっていた。
そんな彼女をみて俺は優しく抱きしめ返した。
彼女にとって一週間の停学なんて大したことではないだろう。
問題はそこではない。
アルバイトをやめなければならないことが問題なのだ。
ばれてしまった以上続けることはできない。
仮に次のバイトを見つけたとしても見つかってしまった場合次は一週間の停学では済まない。
「大丈夫、大丈夫だから」
解決策なんて見つかっていない。
でも俺は彼女にそう言って安心させてあげることしかできなかった。
ひとしきり泣いた後、彼女は俺から離れた。
「ごめんね。私の問題だもんね」
その彼女の発言にチクリと胸が痛んだ。
どうしてそんな寂しい事を言うんだ?
いや、わかっている。
ただでさえ過去俺を虐めていたのに迷惑をかけるわけにはいかない。
そう思っているのだろう。
だとしたら俺は悲しい。
一か月だけだけど、俺は高山さんと少しは親密な関係になれたと思っていたんだ。
「もっと俺を頼ってくれよ! どうしてそんな突き放すような事を言うんだよ」
気づいたら俺は彼女にそう叫んでいた。
同時に涙があふれてきた。
今まで泣いたことなんてなかったのに。
「でも! 私もう……あなたに……迷惑かけれないよ」
かすれかすれの声で確かにそう言った。
俺の考えは当たっていた。
「決めた……」
「え?」
「俺は君にこれから君を迷惑をかける! これは君が俺を虐めてきていた復讐だ!」
それだけ言って俺は、アパートを出た。
何か策があるわけじゃない。
ただ、少しでも希望があるなら。
俺はすぐさま親父に電話をする。
仕事中で出れないことも覚悟していたが、すぐにでてくれた。
そして彼女がアルバイトが見つかり停学になったことや家庭環境などを説明してどうにかして親父の会社でどうにか隠しながらアルバイトとして雇えないかと言った。
社会の事なんて全く考えていない自分勝手な事を押し付けていることなんて重々承知だった。
それでも、それ以上に彼女をどうにかしたい。
その思いが強かった。
しかし、親父からの返答はノーだった。
俺が手伝いとしてくるだけで十分という事、そして俺が土日だけこうして手伝いにこれるのも親父の息子というのが大きいという事。
それに学校で禁止されているのにアルバイトとして雇うことはできないと。
どこかでそう言った答えが返ってくることを分かっていた。
俺がこうして手伝いに行かせてもらっているのも無理言ってしてもらえたことだったから。
彼女を助けると決意したのに、すべてが終わってしまったかのように俺は親父との通話が切れたスマホをもつ手をだらんと下げ、その場でしばらく立ち尽くしていた。
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