28話
12月。
風も冷たくなり制服もいつしか夏服から冬服へと変わっていた。
街に景色も少しずつクリスマスを意識したイルミネーションなどが見られるようになってきた。
「なぁ神崎」
1限目が終わると川崎は俺に向かってそう言った。
このやり取りも今年だけで何回したかわからない。
「なんだ」
「期末考査なんだけどさ……」
川崎の言いたいことはなんとなくわかった。
「勉強会か?」
「わかってるねー!」
「中間考査では必要なかったじゃないか」
「あの時はなんか知らないけど勉強したんだよ」
ではなんで今回は勉強してないのかと突っ込みたかったが、川崎との勉強会をしてない中間考査だけ98点をとってしまったことからもしかして勉強会は必要なのではないかと思ってしまった。
ちょうど今日は金曜日。
泊りがけで勉強するには丁度いいだろう。
「今日でいいのか?」
「あぁ! 毎度悪いな」
「構わない」
俺の為にもなるかもしれないからな。
そんなこんなで、学校が終わり風呂と飯を済ませ川崎の家へと向かった。
「上がってくれ!」
部屋に入りコートを脱ぎ早速勉強へと移る。
この期末考査はどうしても負けられない理由がある為、今まで以上に勉強してきた。
いまでは教師よりも詳しく教えられる自信がある。
「相変わらず神崎の教え方は上手だな」
そんな事を言われながらざっと3時間ほど勉強して後は明日することになった。
部屋を暗くして後は寝るだけとなった時、川崎が口を開いた。
「高山さんとはどうなんだ」
「特に変わらないな」
「そっか……」
そして10秒ほど沈黙があった後、川崎から衝撃的な発言を聞くこととなった。
「俺と安田さん……杏と付き合うことになった、というよりもう付き合ってる」
「は?! いつから!」
俺は驚き布団から飛び出た。
「10月くらいかな」
「そうか……」
先を越されたとか、羨ましいとかそんな感情はなかった。
「川崎から告白したのか」
「あぁ」
素直にすごいと思った。
俺にはない勇気だったから。
「神崎は何に戸惑っているんだ?」
川崎はそう言った。
「俺は……」
隠し通してもいいと思ったが、何故か俺はすべて話してもいいんじゃないのかと思った。
それが夜のテンションによるものなのか、それとも川崎と約半年一緒に遊んできた友情からなのかはわからない。
ただ、俺の今悩んでること、俺と絵美との過去の事を話してもいいんじゃないのかと思った。
そうすれば少しは楽になるんじゃないかと、思った。
だから俺は川崎にはすべて話した。
絵美に昔虐められてたこと。
中学でのこと。
高校にはいって絵美と起こったこと。
そして今の気持ちを。
「そっか……」
俺がすべて話すと川崎はそう呟いてしばらく黙っていた。
「そんな過去がな……でも、神崎は高山さんの事が好きなんだろ?」
「あぁ。だからクリスマスに告白しようと思う。ただ、やっぱり怖い」
「怖い?」
「あぁ、絵美との今の関係も十分に楽しいからな。この関係がもし壊れてしまうと思うと怖い。それに……」
ここから先は言えなかった。
絵美がもしかしたら罪滅ぼしで俺と接してるのではないかなんてことは。
「そうだよなー。そりゃ怖いさ。俺だって怖かったしな。でも……告白してよかった。それは結果論かもしれない。でも、俺は失敗していても同じことを言ったと思う」
「どうして?」
「どうしてかな。俺にもわからない。ただそんな気がするだけだ」
「なんだよそれ」
でも、全部話したからだろうか。
少し勇気が出た。
やっぱり川崎は恋愛においては俺の師匠かもしれないな。
***
高山絵美視点
私は珍しく藤崎凛の家に泊まりに来ている。
しかも、安田さんも一緒。
勉強会という名目で来ていたがいつのまにかお菓子パーティーで勉強なんてしてなかった。
もちろん話は恋話になるわけで。
「そういえば安田ちゃん川崎さんと付き合ってるんだって?」
藤崎凛が唐突にそう言った。
「え? 本当に?」
私は驚いて口にお菓子に伸ばしかけてた手を止めそう言った。
「は、はい……」
「川崎さんから?」
「はい、そうです」
顔を真っ赤にして返事をする安田さんの反応を見る限りどうやら本当のようだ。
「青春ねー……で」
そう言って藤崎凛は私の方を見た。
「高山さんは春人さんとはどうなの?」
「私は……」
関係は続いている。
何も変わらずに。
何も変わらないこと。
それがいいことなのかどうかはもうわからなかった。
「その反応を見る限りダメなようね。本当に私がアタックしてしまおうかしら」
ポッキーを食べながら藤崎凛はそう言った。
「春人さんも春人さんだけど……もしかしてだけど、高山さんは過去の事を引きずってたりするのかしら?」
私はその言葉に目を見開いた。
過去の事と言ってるだけで過去の何とは言ってないがおそらく藤崎凛は私と神崎くんの過去の関係を知ってる。なぜかはわからないけど。
でも、それは少し図星でもあった。
「高山さんがそこを気にしてしまうと春人さんも気にしてしまうと思うけど」
相変わらず藤崎凛は痛いところをついてくる。
気にせずにいられたらどれほど楽か。
何度考えたか。
それでも、気にしないなんてことはどうしてもできなかった。
***
神崎春人視点
期末考査。
準備万端で、緊張もせずに挑み手ごたえも抜群。
見直しも何回も行った。
その結果今回はなんとかオール100を取ることができた。
俺はテストの用紙を持ち、決意にあふれた表情で絵美の待つあの階段へと向かった。
俺と絵美は無言でテストを交換して点数を確認した。
「私の負けだね」
絵美はそう言った。
絵美の数学は92点。
俺の勝ちだった。
「次はどんな絶叫マシンかなー?」
絵美は笑顔でそう言った。
「絵美! 12月24日、その日を一日俺にくれ!」
「え?」
その後、5秒ほどの沈黙があったのち絵美は口を開いた。
「うん。空けとく」
クリスマスイブ。
その日に俺は告白する。
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