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24話

今回は短いです。申し訳ないです

 夏祭り当日。

 俺と絵美は17時に例のカラオケ屋で集合し、向かう事にした。


 集合時間が近づくにつれいてもたってもいられなくなった俺は30分前に集合場所へと着いた。

 スマホでネットサーフィンしながら少し待つと、とんとんと肩が叩かれた。

 振り返ると、黄色の着物に着替え髪を後ろで団子にしたいつもと雰囲気の違った絵美がいた。


「お待たせ」


 心の底から感動すると言葉にできないと思うんだ。

 だって今がそうだから。


「どう……かな?」


 絵美はそう言った。同時に俺は我に返った。


「すごい似合ってるよ!」

「そう! ならよかった! 家にあったから着てみたんだ」


 今の俺にとって今の絵美は直視できないほど眩しかった。

 

「じゃあ、いこっか」


 そういうと絵美は街の方へと歩いて行った。

 俺は置いていかれないように絵美の後を追った。


 街に近づくにつれ人の数も多くなり、的屋がある区域までくると人であふれていた。

 中には家族連れ、友達同士、そして恋人同士と、多種多様であった。


「は、はぐれないように……」


 俺はそう言って絵美に手を差し出した。

 

「うん!」

 

 絵美はそう言って俺の手を握った。

 緊張で手汗がすごくないか心配だったが、それよりも絵美と手をつないでる事に心臓が止まりそうだった。

 俺は改めて恋しているのだと自覚した。


 今日は花火大会もあるのだが、時間は19時から。

 今から大体1時間半ほど。

 俺と絵美は色々な的屋を回ることにした。


「絵美、お腹空いてない?」

「うーん、ちょっとだけ空いてるかも」

「わかった」


 俺は近くにあったたこ焼きの的屋に行き、たこ焼きを二つ買った。

 一つ絵美に渡して近くのベンチに座り、二人でたこ焼きを食べた。


「人多いね」

「そうだな」


 会話が続かない。

 いや、なんて話せばいいかわからない。

 思考回路が止まってるかと思うくらいに浮かばなかった。

 なのに、この沈黙の時間をどにかしなければいけないという思いだけは強くなっていく。


「な、なぁ絵美! もうちょっと的屋を見て回るか!」

「そうだね。花火大会まで時間あるし」


 まだ時刻は18時。

 俺と絵美は、的屋を回った。

 

 金魚すくい、射的など回った。

 気が付けば俺も自然と会話ができるようになり、本当に楽しいと思える時間が過ぎていた。


 そして気が付けばあと20分で花火大会開始となった。

 俺と絵美はなんとか花火見える位置まで移動した。


「花火大会とか久しぶりだなー」

「俺は初めてかもしれない」


 よく思えば俺は花火大会というものに来たことがなかった。

 人生初花火大会である。


「そうなんだ。じゃあ予想以上に綺麗すぎてびっくりしちゃうかもね」


 そんな絵美の横顔にお前以上に綺麗なやつはいないよなんてキザな事を思ってしまったのは口が裂けても言えない。


 徐々に人が集まり初め、気が付けば見渡す限り人で一杯になっていた。

 そして、とうとう花火大会開始のアナウンスが流れる。


 なにやらわからない放送が流れた後、一発目の花火ばぁーんと夜空に打ちあがった。

 同時に周りから歓声がわいた。


「きれーい!」


 絵美は花火を見上げながらそう言った。

 俺はそんな花火に照らされる絵美の横顔を見ていた。

 同時に、この4か月ほどの絵美との記憶が流れていった。


 初めは憎くて仕方なかったのに、絵美の事を知るにつれ俺の気持ちも変化して、気が付けば一緒に弁当食べてるし、交換してるし、気が付けば一緒に遊んでるし、気が付けば……好きになってるし。


 俺はもう絵美なしでは学校生活を楽しめないレベルに来ていたのかもしれない。

 そう、だからこそ。


 俺は怖かった。

 この関係が崩れてしまうことが。


 もしかしたら絵美は俺を虐めていた罪を償うためにこうして遊んでくれてるのではないかと。

 そんなことはないとわわかっている。

 でも、もしも0.1%でもその可能性があるとするならば、その0.1%が本当に怖い。


 自分の気持ちを封じ込めている事はわかっている。

 でも、それでも、俺はその0.1%には勝てない。


 でも、これだけは伝えないと思った。


「なぁ絵美」

「ん?」


 絵美は優しく俺の方をみた。

 あふれ出る気持ちをぐっと抑えて俺は言った。


「これからも、よろしくな」

「こちらこそ、よろしくね!」


 絵美は少し止まった後、そう言った。

 自分が不甲斐ない事はわかっている。

 

 99.9%の希望よりも0.1%の絶望を恐れた。

 でも、それは仕方のない事だと思う。

 まだ、早まる必要なはないと、自分に言い聞かせて、俺は勇気が湧いてくるのを待つことにした。


 夏の夜に打ちあがる花火を見ながら、俺もあんな風に気持ちを爆発させられたらどれほど楽だろうかと、そんなことを思っていた。




 花火大会が終わると、時の流れは自然と早く感じ、2学期が開始した。


 


 



 

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