2話
ブックマーク登録していただいた方本当にありがとうございます!
本当に嬉しい限りです!
翌日、学校のお昼休みに入ると、俺は彼女がいる屋上に続く階段へと向かった。
「今日も来たの?」
「言っておきたいことがあってね」
「何?」
彼女は昨日の泣きじゃくっていたのが嘘のようにクールな態度を取っていた。
「今日学校が終わったら俺の家にきてほしい」
「はあ? あ、あんたひ、一人暮らしなんでしょ? そ、それに私今日ば、バイトだし?」
「いや、高山さん今日バイトが入ってないことは確信している」
「なんで確信してるのよ……」
「とりあえず家に来てほしい」
「わ、わかったわよ…… でも私あんたの家知らないわよ」
「案内する。学校終わったら近くのスターボックスコーヒーにきてほしい」
「わかったわ」
何故か彼女の顔が赤かったが、用件を伝えれた俺はそのまま教室へと戻った。
学校が終わり、近くの約束した場所で彼女と合流した。
「ちゃんと来てくれたんだ。よし、じゃあいこっか」
「約束は守るわよ」
彼女を連れて俺は現在一人暮らししているマンションへと案内した。
思い立って勢いで行動してしまったが、女の子を家に連れ込むのは初めてかもしれない。
「やっぱりお金持ちの人ね。高校生の一人暮らしで2LDKなんで必要ないでしょ」
「親父がここにしろって言ったからな」
「で、何? 私に格の違いを見せて馬鹿にする為にここに呼んだの?」
「昨日はすまなかった」
俺は部屋に入るとすぐに彼女に謝罪をした。
「な、なんであんたが謝るのよ」
「昨日の俺の行動を高山さんを傷つけた」
「でも、あんたは私に仕返しをしようとして行ったことなんでしょ。だったら謝ることではないでしょ」
「確かに高山さんにされたことを僕はまだ許せないと思う」
うっという声が彼女から聞こえた気がしたが、無視して話をつづけた。
「昨日、高山さんと別れた後高山さんが働いているアルバイト先にいって勝手で申し訳ないけど店主から色々聞いた」
「色々って?」
「高山さんが中学生の頃はずっと早朝の新聞配達のアルバイトや家事も行っていたこととか」
「そう……」
勝手に聞いたことを怒るかと思ったが彼女は怒ったような素振りを見せなかった。
「それでもあなたが謝る必要はないと思うけど」
「俺も正直悩んだ。高山さんは正直言って憎い。でも、店主からの話や高山さんの頑張りをほんの少しでも見てしまった俺は、このまま復讐を続けることはなにか違うと思ってしまった。まだ高山さんの事を全然知らない。それでも、その頑張りを俺は素敵だと思ってしまった。だからこそ自分のこの感情に一日中戸惑った。正直まだわからない。ただ、昨日のことと勝手に話を聞いたことについては謝らないといけないと思った。だから今日謝った」
自分の思っていることをありのまま彼女にぶつけた。
「本当にあなたには嫉妬してしまうわ……」
そう言った彼女は涙をこぼしていた。
昨日のように顔をくしゃくしゃにしてとまでは行かないが、ぽろりと何粒か確かに涙をこぼした。。
「本当に謝らないといけないのは私の方なのに。私が勝手にあなたに嫉妬して勝手にあなたの心を傷つけた。だから謝らないといけないのは私。だけどあなたは必死に考えてくれて自分の心と葛藤しながら私に謝ってくれた。本当に……自分が情けない……」
彼女はまた土下座をした。
「これで許されるとは思っていません。都合のいいなんて思われるかもしれません。でも……できることなら……友達として……」
嗚咽まじりながら彼女は確かに俺は謝罪をした。
昨日の土下座は俺への謝罪ではなく口封じとして。
しかし、今彼女が行っている謝罪を確かに過去に彼女が俺に行った事に対しての謝罪でった。
あれほど憎んでいたのに、たったこれだけのことで俺は彼女を少し許していた。
完全にではないだろう。しかし、どこか一区切りしてしまった感覚があった。
俺の心がこれ以上を望んでいないような気がしたから。
「顔を上げてください」
俺が声をかけると彼女は顔をあげた。
その顔は泣いているせいで赤くなっていた。
顔も少しくしゃくしゃになっていた。
「こちらこそ、友達になってください」
俺がそういうと彼女は手で顔を覆い、さらに泣いた。
「ごめんなさい……本当にごめんなさい」
「そういう時はありがとうって言ってほしいな」
彼女は顔を上げてくしゃくしゃになった顔から一変して最高の笑顔で俺に言った。
「神崎君。ありがとう! これからよろしくね!」
その後、俺は彼女を家に送り届けてまた自宅へと帰ってきた。
そしてすぐさま、親父に電話した。
「もしもし親父? ちょっといいかな?」
----------------------------------------------------
高山絵美視点
謝らないといけない。でも、今更謝ってどうなるんんだろう。
なんて事を思っていた。
でもそれは自分に言い訳をして逃げてるだけだった。
神崎君は私が昔虐めていたにも関わらず自分の心の葛藤と戦ってきちんと自分の中で答えを出して私に謝罪をした。
先に謝らないといけないのは私のはずなのに。
私よりもよっぽど心が綺麗で正直な人だ。
こんなにも心が汚れている自分が恥ずかしい。
こんな私が神崎君に許してもらえるはずがない。いや許されてはいけない。
でも、私は無意識の内に友達になってほしいなんて口走っていた。
それは私が許してほしかったからなのか、彼の綺麗な心に惹かれたのか、正直今でもわからない。
そして、彼はこんな私と友達になってくれた。
あの時の神崎君の優しく温かい声は今でも耳に残っているようだ。
これからは、私が彼に償わなければならない。
もっと早くに行動しなければならなかったのかもしれない。
それでも、どんなに遅くても行動しないよりはいい。
私はそう決意した。
---------------------------------------------------
神崎春人視点
翌日、次は高山絵美からお昼休みにあの階段にくるように言われた。
「おーい神崎。今日は一緒にご飯食べようぜー」
「すまない川崎今日も無理そうなんだ」
「えー。もしかして……これ?」
そう言って川崎は小指を俺の方に見せてきた。
いつの時代の人間だおまえは。
「そんなんじゃない……けど無理そうなんだ」
「そうなんだ。でも女の紹介はいつでも待ってるぜー」
そう言って川崎は笑顔で手を振りながら食堂の方へ向かっていった。
本当に彼はいい人だ。
ここ数日誘いをずっと断っているにも関わらずこうして誘ってくれる。
少し心が痛みながらも高山絵美の待つ場所へと向かった。
「ごめん待ったかな」
俺がつくころには彼女はすでに座っていた。
昨日の一件もあってたか表情が昨日よりも柔らかくなっている気がする。
「ううん。全然大丈夫だよ。あ、あのね神崎君」
「何?」
「これ……作ってきたの」
そういうと彼女は包みに包まれた弁当を俺に差し出した。
「え? でもいいの……?」
「大丈夫大丈夫!」
彼女がお昼を切り詰めていることを俺は知っている。
でも、それを心配させない為に俺の分と彼女の分二人分の弁当を作ってきたのだろう。
自分もちゃんと食べるから大丈夫と……
そんな彼女の配慮を感じながらも俺は余計に心配になってしまう。
それでもこれは彼女なりの謝罪なのだろう。
では、それを受け取らないのはあまりにも非道というものだ。
「じゃあもらおうかな」
「うん!」
弁当を開けると野菜から男子が好きそうな肉料理までバランスよく作られていた。
そして、肉料理であるハンバーグを一口食べてみる。
「美味しい!」
「良かったぁー! 男子にお弁当作るなんて初めてだったから」
そんな彼女の笑顔に少しドキッとしてしまった。
「男子の好きな物とかよくわかってないから明日から嫌いな物もいれちゃうかもだけど嫌いな物あったら言ってね」
え?
明日からも弁当を作るつもりなのか?
それは流石に申し訳ない。
それは彼女の家庭環境に関係なくだ。
しかし彼女の意思でこうしてもらってる以上、断るのも少し気が引ける。
少し考えて俺は名案を思い付いた。
「あのさ、もしよかったら明日からお弁当交換しない? 俺が作った弁当を高山さんが食べてよ」
「え? でもそれじゃあ……」
彼女の言いたいことはわかっている。
それだと謝罪にならないと、言いたいのだろう。
でも、それでもここは譲るわけにはいかない。
「俺がそうしたいんだ」
「う、うぅ。わかったよ。楽しみにしてる!」
「うん! 楽しみにしてて」
自分でハードルを上げてしまったことを後悔しながら俺はその日の学校帰り女子の弁当には何をいれたらいいのか考えながらスーパーへと向かった。
幸いにも中学の時モテるために料理も少しお父さんの知り合いの人から教えてもらっていた。
だからまずくはない……と思いたい。
次の日
川崎には来週どこかで絶対に一緒に行くと約束して高山絵美の元へと向かった。
「これ……あんまり自信ないけどどうぞ」
初めて女子に料理を振舞う。
昨日高山さんはこんな気持ちだったのかと思うと俺は素直にすごいと思った。
「すごい! 美味しそう!」
俺の弁当を開けた彼女はすぐにそう言った。
「ごめん女子にどんなもの入れたらいいかわからなくて自分が好きなもの入れてしまった」
卵焼きとか唐揚げとか。
女子には出すにはどうかと思ったけど俺に女子の弁当がどんなものかなんて知識が持ち合わせていなった。
こんなことなら中学の時に一人くらい付き合って勉強しておけばよかったと後悔した。
「ううん! 全部私の好きな物ばっかりだよ! じゃあ、いただきまーす!」
そう言って彼女は卵焼きをぱくっと一口食べた。
「美味しい! 神崎君料理上手なんだね!」
「よかったぁ。本当に……」
「その気持ちわかるよー。私も昨日そうだったもん」
えへへと笑う彼女を見るとやっぱり可愛いなと思ってしまう。
数日前まで憎さが勝ってしまいあまりそうは思わなかったが、改めてみると可愛い。
それからちょくちょく川崎とのお昼をはさみながらも高山絵美と俺のみんなに内緒の関係が続き、一か月が過ぎようとしていた――
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ブックーマーク登録や、感想などいただけるとモチベーションアップにつながりますので是非お願いします!
こうした方がいいよっていうご指摘もお待ちしていますのでお願いします!