16話
あと一話で体育大会の話を終わります。
だらだらと長くなってしまい申し訳ございません。
体育大会当日。
小中学校の運動会と同じく保護者、そして地域の人たちが見ることができるらしい。
といっても進学校の面白くもない体育大会を誰が見に来るのだろうか、と思っていたが当日になると予想を遥かにこえる観客に驚きを隠せなった。
こんな場で輝ける川崎が羨ましい。
まだ輝けると決まったわけではないが。
親父にも事前に伝えておいたが来るかどうかはわからない。
「川崎、とうとうきたな。体育大会」
「そうだな、この二週間本当にしんどかったぜ。これでモテなかったら俺は生涯独り身だ」
「それは大げさだけどな」
しかし、川崎の目は2週間前よりも自信に満ち溢れている。
きっと今日の川崎ならばやってくれるだろう。
野球チームの監督のような心で俺は川崎を見ていると、突然後ろから肩をとんとんと叩かれた。
振り返ると絵美がいた。
「春人……ちょっといいかな」
あまり一目のつかないところに移動して話を聞くことにした。
「どうした?」
「今日のお昼休みね、お母さんが来るらしいの。それで春人と少しお話したいって……」
「ま、まじか」
俺から絵美のお母さんに何を話すことがあるのだろうか。
いつも絵美とは仲良くさせてもらっています以外に特に見つからないのだけど。
「わかった。とりあえず今日のお昼休みも一緒にご飯を食べよう」
「ありがとう! 今日は頑張ってね!」
「あぁ、絵美もな」
そうして9時になり体育大会の開会式が開かれた。
第一種目みんな大嫌いラジオ体操を心を無にして消化し、自席へと戻る。
午前の種目で初めに訪れる注目される種目は男女混合リレーだ。
各クラス1走目を男子2走目を女子という風に繰り返せし、全5人で走る種目だ。
男子2人女子2人出すことが条件で、5人目は男女どちらでも構わない仕様だ。
やはりアンカーは陸上部が多い。
そして俺はこの男女混合リレーに出る。
川崎は男女混合とは別のクラス対抗リレーにでる。
そちらの方が盛り上がるから。
放送部のアナウンスで男女混合リレー出場者は準備をするように言われる。
俺は絵美と共に、待機場所へと移動する。
そう、絵美も俺と同じチームでリレーに参加する。
絵美が4走、そして俺が5走目のアンカー。
正直陸上部が集うアンカーは嫌だったのだが、クラス会議で出場者を決める時にクラスの多数決で強引に決められてしまった。
民主主義とは時に残酷だと思った。
それから1走、2走と決めていったのだが4走目の女子を決める時にクラスの女子の大半が手をぱっとあげるなか、絵美がゆっくりと手を挙げたのを確認して先に手を挙げた女子たちはゆっくりと手を下した。
クラスの男子はその光景を見た後「闇だ……」とつぶやいていた。
そんな闇を超え今こうして俺たちのチームは結成された。
そしてとうとう俺たちの順番が来た。
スタートのピストルが鳴り、1走目が走る。
その時点では他クラスと互角。
しかし2走目の女子で少し離されてしまう。
「ごめんなさい……」
2走目の子は走り終えると申し訳なそうにしていた。
「全然大丈夫さ!」
しかし、3走目の子でさらに差が広がってしまう。
「絵美、少しでも差を縮めてくれ」
絵美にバトンが渡った時点で順位は全5クラス中ぶっちぎりの最下位。
しかし、絵美が想像以上に早かった。
部活をしている子たちにみるみる差を縮めていく。
まだ最下位のもののほとんど差がなくなった。
「春人、後は任せた」
「任された!」
やはりアンカーは全員陸上部。
しかしそんなの関係ない。
中学生の頃もリレーで陸上部をごぼう抜きして陸上部泣かせと言われた力を今みせてやる!
絵美からバトンを受け取った俺は足を最大限に回した。
そしてぱーんという音ともにこのリレーに終止符がうたれた。
***
「神崎君すごーい」
「陸上部の子たち泣いてるよー」
俺たちのチームは1位でフィニッシュした。
俺は男子そして女子から囲われていた。
何故だか絵美からまた殺気が溢れているような気がするが見なかったことにしておこう。
「なるほど神崎。そういうことか」
そう、これも俺が先に見本を見せることで川崎のやる気をさらに加速させる作戦なのだ。
「次はお前の番だ、川崎!」
「任せてくれ!」
午前も終盤に差し掛かったころ。
とうとうクラス対抗リレー行われた。
クラスの強者たちが揃うリレーは、生徒の間でも盛り上がる。
そんなレースのアンカーは川崎だ。
このレースも全5人5クラス。
1走目の人がスタートラインにクラウチングスタートの準備をする。
ピストルがなると同時に一走目の人が走り出す。
同時に、生徒たちの間で歓声が鳴り響く。
俺たちのクラス1組は、先頭になんとかくらいつきながら2走、3走と続いた。
しかし、4走目のバトンパスで事件は起きた。
そう、バトンパスをミスして落としてしまったのだ。
もちろん距離は離され川崎にバトンが渡るときは距離はかなり離れていた。
でも、川崎の目はしんでいなかった。
今まで見たどの川崎の走りよりも速く走り距離をどんどん詰める。
そしてゴールの合図のピストルが鳴った。
残念ながら俺たちのクラスは2位。
強者揃いの中絶望的な距離を縮め2位まで浮上したのは褒められていいものだった。
でも川崎は納得していなかった。
俺たちのクラスのテントに戻ってくる川崎の姿は元気がなかった。
「川崎お前凄いな!」
「川崎君かっこよかったよ!」
「陸上部より速いとかすごいなお前!」
帰ってきた川崎にクラスのみんな賞賛の声を送った。
それは、男女変わらずに。
「でも、俺1位になれなかった……」
「なーに言ってんだよ! もっと自分のしたことに誇りをもて!」
先ほどまで落ち込んでいた川崎の表情は元に戻った。
「神崎……お前のおかげだ」
「午後の騎馬戦を終えるまでが作戦だ」
「あ、あぁ。そうだったな」
輝け川崎大作戦はアクシデントのおかげで今のところ順調だった。
そして、体育大会午前の部は終了した。
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