14話
今回はおまけ話程度に思っていただければと思います
保健室の先生と担任の先生と少し話をした後、俺は絵美と二人での絵美の家へと向かった。
やはり女の子の家に行くのは、少し緊張してしまう。
家に到着し、扉を開けようとしたその時、バッと扉が開かれ妹の一人が怒った表情をして出て行ってしまった。
家の中を見るともう一人の妹が床に膝をつき泣いていた。
「どうしたの美帆!」
「私……だって……」
おそらく、今すすり泣いてるのが美帆ちゃんというのだろう。
絵美は美帆ちゃんに近づき何があったのかを問いかけていた。
その後、美帆ちゃんから簡単にこうなった経緯を説明してもらった。
高山家の事を俺も聞いていいのか分からないが、あのまますっと帰るのも何か違う気がしてそのまま滞在した。
聞いた話を簡単にまとめると美帆ちゃんともう一人の双子の妹である真帆ちゃんは中学生にあがったこの4月からそれぞれ生活が変わったらしい。
真帆ちゃんは小学校の時の町内会のバレーで凄まじい運動能力が評価されて中学校のバレー部の顧問の先生がわざわざ家まで来てどうかバレー部に入ってほしいと言われ今は部活をしているらしい。
同時に早朝近くの八百屋さんの開店準備を定期的に手伝ってお小遣いをもらっているらしい。
そして、美帆ちゃんは家事を全般的にしているらしい。部活もせずに。
絵美はバイトで遅くなるし仕方のないことだったらしい。
真帆ちゃんがもらうお小遣いはそれぞれ美帆ちゃんと半分ずつにする約束だったらしい。
その代わりに家事を行うという事だったから。
つまり疑似的に夫婦の形を双子の姉妹でとっていたわけだ。
しかし、真帆ちゃんは自分がお小遣いを稼いでいるんだから美帆ちゃんのお小遣いは少なくていいと言い、美帆ちゃんはお小遣いの3割ほどしかもらえなかったらしい。
そこから口論になり今に至ると。
「元々は八百屋のおばちゃんが親切心から美帆と真帆にお小遣いをあげると言ってくれてたんだけど、それだと流石に申し訳ないからお手伝いをすることになったの。私達の家計が苦しいのは知っていたから……」
なるほど。
でも、これはどうしたものか。
「ごめんね春人……」
絵美は申し訳なさそうに謝った。
二人とも手伝いにいけばいいのではと、提案してみたが中学校が給食ではなく弁当制の事から二人の弁当は美帆ちゃんが作っているらしい。
もちろん絵美も手伝ってはいるらしい。
俺も弁当を作っているからわかるが、毎朝弁当を作るというのは本当にしんどい。
それも中学生でこの4月から二人分とはいくら絵美が手伝っているとはいえ相当しんどいだろう。
「美帆ちゃんはどうしたいの?」
俺はできるだけ優しく美帆ちゃんに問いかけた。
俺が口を挟むのをおかしな話だと思うが、折角話を聞いたのだから力になりたい。
「私は……私だって……しんどい思いしているのに……」
そこで美帆ちゃんは申し訳なさそうに口を閉ざしてしまった。
なるほど。
少しわかったかもしれない。
美帆ちゃんは自分の思いを封じ込めているのだ。
最近そういう人を見た気がするけど正直世の中そういう人の方が多いだろう。
それに比べ真帆ちゃんは自分の思いをどんどん口にするタイプだ。
口論になったと言っていたが正直真帆ちゃんの一方的な言葉攻めにより終わっただろう。
「よし。わかった。絵美。ちょっといいか」
俺は絵美を外に呼び出した。
「どうしたの?」
「二人を仲直りさせる為の案なのだが……」
俺が考えた案は二人ともそれぞれ違う生活を三日間行ってもらう。
真帆ちゃんは三日間家事を。
美帆ちゃんは三日間手伝いを。
「どうかな?」
「わかった」
絵美がそういったと同時に真帆ちゃんが帰ってきた。
どうやらコンビニに行ってたらしい。
「真帆。ちゃっと話があるから」
絵美のその顔は真剣だった。
滅多に見せないその顔に妹への愛を感じた。
俺の案を二人に絵美から話すと意外にも二人はすんなり了承してくれた。
真帆ちゃんの部活の顧問が体調不良で休みらしく、自主練になったことが救いだった。
それから三日間、学校での絵美がいつもよりそわそわしていたのが面白かったが、俺も二人の事が少し気になっていた。
そして三日後、俺は絵美と一緒に絵美の家へと向かった。
同時に美帆ちゃんも帰宅したらしい。
「今日で三日たったけどどう?」
絵美がそう言うと、美帆ちゃんと真帆ちゃんは二人して黙っていた。
少し時間が経った後、二人は同時に口を開いた。
「「ごめんなさい!」」
同時に謝ったことに二人はまた同時に「えっ」と驚く。
そして先に話したのは真帆ちゃんだった。
「ごめんなさい。家事なんて楽だと思っていた。ご飯なんて誰でも作れると思ってた。でも、実際やってみたらわからないことばっかりだし、ご飯の作り方なんてわからないし。美帆も初めはわからなかっただろうに頑張ってくれてた。それを私は馬鹿にして……」
そういう真帆ちゃんの手を包み込み美帆ちゃんは言った。
「私もお手伝いにいってわかった。思ってたより力仕事多いし、忙しい。あんなことを朝早くから毎日しているなんて私じゃできない。真帆ちゃん。いつもありがとね」
美帆ちゃんがそういうと真帆ちゃんを目を少し潤わせた。
「私の方こそ……ありがと」
そんな二人を見て俺と絵美は微笑んでいた。
「よし! じゃあ無事仲直りできたし、俺が特製オムライスつくってあげよう!」
仲直りの記念に俺の特製オムライス改で高山家の舌をうならせてやるぜ!
そういえば結構絵美の家にお邪魔してるけど、絵美のお母さんはどうしているんだろうか。
母子家庭って言ってたからいるんだろうけど。
俺から聞くことじゃないからいいか。
とりあえず今は、目の前のオムライスに集中しよう.
***
高山絵美視点
春人がオムライスを作ってみんなで食べた後、春人は少し妹たちと話して帰っていった。
二人の性格を理解していい仲直りの案を出してくれた。
そういうところは鋭いのに、どうして恋愛になると鈍感なのだろうか。
それとも私の押しがやっぱり弱いのかな。
私が美帆と食器を洗っていると、洗濯物をたたんでいる真帆が私の方をみてニヤニヤしていた。
「ど、どうしたの真帆」
「いやーお姉ちゃんまたあのイケメンのお兄ちゃんの事考えているのかなと思って」
真帆にそう言われて私はすごい勢いで顔が熱くなった。
「べ、別にそんなのじゃない!」
「あー図星だー」
「違う!」
「でも3歳差だったらもしかして私も……」
少し思いつめたような表情で真帆はそう言った。
「え? もしかして春人の事……?」
「冗談だよー! でもお姉ちゃんがモタモタしてたらもしかしたら私が奪っちゃうかもね!」
先ほどまでの思いつめたような表情から一変し舌をべーと出して笑う真帆。
「私……ハンバーグの練習しようかな」
「え? 美帆?」
洗い物をしならがら美帆はぽつり呟やいた。
そして洗濯物がたたみ終わった真帆が私たちの方に近づいてきた。
「だって、私たちに3日間違う事させる案考えたのあのお兄ちゃんでしょ?」
「なんでわかったの!」
「だってお姉ちゃんがあんな事言う訳ないしね。それにさっきお兄ちゃんと話してて、私達二人の事、理解しようとしてくれてたし。あーお姉ちゃんが惚れる理由もわかるかなー」
真帆……あなたはなんて鋭い子なの。
妹だけど侮れないわね。
「明日はハンバーグにしようかな……」
「美帆……冗談だよね?」
「お兄ちゃん言ってくれた。私の思っている事もっと表現していいって。言っていいって」
美帆はにっこりとほほ笑みそのままお風呂へと行ってしまった。
わからない。二人は本気なの? それとも冗談?
藤崎凛だけでも手ごわいのに……
二人が仲直りして嬉しい反面どこか複雑な気持ちだった。
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