1話
稚拙な文章ですが読んでいただけると嬉しいです
俺の名前は神崎春人
俺が小学6年生の頃。
学校一の美少女と言われてた女の子に1年間虐められていた。
虐めといってもわざと聞こえるように悪口を言われたり、上履きを隠されたりと直接肉体に攻撃してくるようなことはなかった。
その女の子は、学年で、否学校で一番可愛いと言っても過言ではない。もちろんカーストも一番上。彼女の取り巻きである女子達も俺に虐めをするようになった。
陰キャラにも関わらず地味にプライドの高かった俺は、相当その美少女を恨んでいた。
小学卒業と共に俺は親の仕事の関係上他県に引越しをした。
そして、中学入学と同時に、顔が隠れるほどの長い髪をバッサリと切り、体も鍛え始めた。
自分で言うのもなんだが、顔は相当にいい方だと思っている。
中学デビューを果たした俺は、卒業までに3桁を超える女性から告白された。
しかし、その全ての告白を断った。
なぜなら、俺はあの忌まわしい女に告白させキッパリ断りあいつのプライドを傷つける事。
それが俺の目的なのだ。
色々な手を使いあの女の進学予定高校の情報を調べ親に無理を言って、その高校に進学させてもらった。
小賢しい事にあの女はその地域でもなかなかの進学校に進学予定だった為、勉強もそこそこ頑張った。
そして、三年の時を得て、今日ようやくあの女に復讐を始めることができる。
初めての一人暮らしの不安すらかき消すほどワクワクしている。
新しい制服に身を包み、西高校の入学式へと向かう。
「みてあの人、ちょーイケメンじゃない?」
「ほんと! 新入生かしら?」
そんな声が周りから聞こえてくる。
こんな声にも慣れたものだ。
しかし、俺の目的はただ1人。
入学式が終わり、発表された各教室へと向かう。
教室に入ると同時に一目でわかった。
小学生の時と何も変わってないその憎たらしい顔を忘れるはずもなかった。
「あのかっこいい人同じクラスだよ!」
「やばいやばい授業集中できないよ」
クラス中の女子がこちらを見る中、俺はあの女に満面の笑みで手を振った。
周りの女子達がきゃーと騒ぐ中、あの女はこちらに少しぎこちない笑顔をみせた。
なぜ、そんなぎこちない笑顔なのだ。
小学生の頃の顔は覚えられてないはずだから、バレてはないはずだ。
少し不安を感じながらも、担任の先生が教室に入ってきて、軽くHRをしてその日は終了となった。
まだ早まる必要はない。
必ずあの女に告白させてみせる。
翌日
登校して自分の席に着席すると前の席の男子が声をかけてきた。
「おはよう!えっと、神崎、だっけか?」
「おはよう。神崎であってるぞ。川崎だよな」
「おお! 名前覚えてくれてるのか! なんか嬉しいわ」
自分の座席表を確認した時に嫌でも目に入るから覚えていた。
「神崎ってめっちゃイケメンじゃん。男の俺からみても相当なイケメンだと思うんだよ。で、彼女とかいるの?」
川崎のその一言でクラスの女子達の意識がこちらに向いたのがわかった。
もちろん、この空間にはあの女もいる。
ここは、少し大きめな声で彼女いない事をアピールしておくか。
「いやー彼女いないんだよなー。ていうか生まれて一回もできたことないぞ」
「嘘だろ! あぁ、あれかな。イケメンすぎて逆に近寄らないパターンかな」
俺の発言にクラスの女子達がざわめく。
しかし、あの女は全く反応しない。
「高嶺の花、と言えばこのクラスの高山絵美さんとかどうよ」
高山絵美。俺のターゲットである女の名前だ。
それにしても川崎とかいうやつ。声量を考えたらどうだ。クラスのみんなにまる聞こえだぞ。
といっても、俺からしたらむしろ好都合なのだが。
「高山さんなんてきっと俺なんて興味すらないよ。俺にとっても彼女は高嶺の花だと思う」
ここまでいっても彼女に反応はなかった。
こいつどこまで聞いてないふりをするつもりだ。
他の女子は騒めいてるあたり絶対に聞こえてるはずだ。
「ま、神崎に彼女ができるのは時間の問題だろうなー。彼女できたら俺にも女の子紹介してくれよな」
「ははは、俺が紹介してもらう事になるかもよー」
あの女に復讐する事が目標だが、友達がいらないわけではない。どうせなら輝かしい高校生活を送りたいし、この川崎というやつと仲良くしていてもいいだろう。
その後、午前中の授業が終わりお昼休みになった。
あの女は他の友達と話すわけでもなく、すぐさま教室を出て行った。
購買にでも行くのかと思い川崎の昼飯の誘いを断り俺は高山絵美の後をついていった。
すると高山絵美は人目のつかない封鎖された屋上への階段でサンドウィッチを食べていた。
「どうしてそんなところでご飯を食べてるの?」
その場を立ち去ればいいものを俺は何故か高山絵美に声をかけていた。
「え? どうしてここに?」
「屋上に行こうと思ってきたら君がいた」
驚く程すんなりと嘘が出てきた。
「そ、そうなのね…… こ、ここで食べてるのはこんな貧相な食事みんなに見られたくないから」
彼女のサンドウィッチを見るとパンの中身にレタスがはさんであるものだった。
しかし、一つしかない。これではお昼ご飯としては足りるわけがない。
「なら……」
「いいの。これ以上は聞かないで。あと私がここで食べてたことも皆には言わないで」
「あ、あぁ」
彼女の鬼気迫る表情に俺は後ずさりして了承してしまった。
俺は何か彼女に秘密があるに違いない。それがもしかすると俺の復讐に役立つならと思った。
今日の授業がすべて終わると、彼女はまたすぐさま教室を出ていった。
今日の昼休みのこともあってか、俺は怪しいと思い彼女の後を追うことにした。
明らかにストーカー行為だが、俺の復讐の為ならと躊躇う事は全くなかった。
彼女は学校から出て15分ほどしたところの大通りから細道に入った裏路地にあるお店へと入っていった。
看板をみるとどうやら隠れ家的なお店らしい。
10分程時間をおいてそのお店へと入った。
「いらっしゃいま……え?……神崎君?」
「あ、高山さんじゃないか」
白々しく俺は挨拶をした。
彼女はそれこそ絶望したかのような顔をしていた。
なぜなら俺たちの高校はアルバイトが禁止されているのだ。
俺の姿を確認した高山絵美は厨房に入っていき少しすると俺のところに戻ってきた。
「ちょっときてもらっていい?」
俺は高山絵美に連れられ外にでた。
「あの……ここで働いていることは……」
彼女は暗い顔でうつむきそう言った。
俺は彼女の発言に何も言わなかった。
「お願い……」
しばらく無言でいると突然泣き出し、土下座をやり始めた。
「な、なにをしているんだ!」
「これで、許してください。どうか黙っていてください」
あのプライドの高い彼女がここまでするのはなぜか。
お金がそんなに必要なのか。
いや、お金が必要なのは間違いない。しかし、ここまでしてお金が必要な理由が彼女にあるのではないのか。
そう思った。
「どうしてアルバイトしているんだ?」
「お金が……必要だから」
彼女は泣きながらそう答えた。
「でも、校則違反だ……」
彼女は復讐相手だ。俺は自分の心がなぜか痛んでいることに苛立ちながら彼女にそう言った。
「どうして……それは私が昔虐めていたから?」
「気づいていたのか」
「えぇ。一目見たときからわかったわ。私に笑顔を向けたとき、あなたは私を許していないとすぐにわかったわ」
「俺は昔、前髪で顔が隠れていたはずだ」
「水泳の授業の時に髪をかき上げたときにあなたの顔をみたことがあるわ。印象的だから忘れるはずもないわ」
「わかっていたのか」
ばれているのならば、計画変更だ。
俺は彼女に聞かなければならないことがある。
「小学生の時、何故俺をいじめた」
「……」
彼女は答えずに顔を下に向けていた。
「言わないならば、このことを学校に言う」
「好きなだけ殴ってもいい。だから許して」
「ダメだ。お前をいくら殴っても俺はお前を許すことはない」
「羨ましかった……」
「なんだって?」
「羨ましかったのよ! あなたのことが!」
俺のことが羨ましい?
何を言っているんだこの女は。
「意味が分からない」
「そりゃお金持ちのあんたじゃあわからないわよ! あなたがお金持ちなのは有名だった。だから、それに嫉妬したのよ! 私は……こんなに苦しい思いをしているのに……どうしてあんただけって……」
高山絵美の目から涙が止まらなかった。
俺の家は確かに貧乏かと言われたらそうではない。
俺の父親が某大手企業の社長で、今回の一人暮らしに関しても一人暮らしにしては大きい部屋を与えてくれたし仕送りも多い方だろう。
が、どうして彼女はそれを……
いや、流石に俺でも大体勘づいている。
彼女の家は貧乏なのだ。それも深刻なほど。
だから彼女はこうして働いている。
「じゃあ、アルバイト可能な高校に行けばよかったじゃないか」
「この辺りでアルバイト可能な高校なんて私立しかないし、どうしても家から近い高校に行く必要があったのよ」
詳しい理由はわからない。
しかし、彼女が大変な思いをしていて、俺の恵まれた環境に嫉妬し虐めたというのはわかった。
それはとても許されることではなかったが、泣きじゃくる目の前の高山絵美を見ていたら復讐について少し考え直していた。
理不尽な理由で虐められていたかもしれない。
でも俺もどこかで被害者面しすぎていて、もしかすると俺の行動次第ではいじめはなく、むしろ仲良くなれていたのではないかと。
「わかった。学校には言わない」
「え? いいの?」
「だが、お前が働く理由を俺に教えてくれ」
俺の小さな復讐のつもりであった。
彼女はきっと俺に理由を説明をしたくはないはずだ。
アルバイトを脅し文句にして聞くのはずるいと思うが、だからこそ復讐なのだ。
「お金がないから……」
「それはわかっている。お金が必要な理由があるはずだ」
「そ、それは……わかったわ。じゃあ私がバイト終わるまで待ってもらっていいかしら」
「わかった」
彼女のバイトが終わるまで日が完全に暮れるまでかかった。
「お待たせ」
制服に着替えなおして高山絵美が店からでてきた。
「ついてきて」
しばらく高山絵美についていくとみるからにボロいアパートについた。
「「お姉ちゃんおかえりー」」
中には女の子が2人いた。
きっと高山絵美の妹なのだろう。顔が似ている。
「その男の人は彼氏ー?」
「違うわ。全然」
「これが理由よ。私の家は母子家庭で妹も二人いてお金も足りないの。母親の収入だけじゃ厳しいから私も働いているの」
「そうなのか……」
自分の知らない世界だった。
お金に不自由さを感じたことのない俺は彼女達のような人のことを考えたこともなかった。
「わかった」
俺はそれだけ言って彼女の家を出た。
「あの! このことは……」
「わかっている。言わない」
そう言って俺は彼女のアルバイト先へと向かった。
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