case.2
タッタッタッ…
再びリージュを背にしたまま布津は道を駆けていた。
「そんなにいしょがなくてもいいんでないでちか?」
背中のリージュが布津に問う。
「む」
不具合があったかと、布津が速度を落とす。
「何かまずいことでもあったか?」
「ううん、ただはじめてきたからいろいろみてみたい」
リージュは容姿相応に目を輝かせて周囲を見やる。
回りは高層ビル群。オフィス街の真ん中。
リージュはいいと思えど、その場に不釣り合いな幼女と金髪仏頂面の男はあまりにも『浮いて』いた。
「すまないが…」
また今度に、と言いかけた所で、
「おぉーい!」
と、声がかかる。
周囲はまだ日中の為か大勢の人間が行き交う中、誰を呼んだものか分からなかったが、
「純能介~!」
思わず身を固くしたが、自分を呼ぶ聞き覚えのある声。周囲を見回すと、声の主が居た。
「…何故ここにいる」
布津は呟くと、観念したように声の主に向き直る。
…人混みをかき分け、ようやくその人物は布津の前に立った。
「おぉ~」
背中のリージュが小さく声を上げる。
「敷島。北海道はどうした?」
布津は目の前に現れた女性、敷島 侑子に疑問の目を向けながら問う。
「あぁ、ツンツンがな、たまには長期休暇でも取ってこいとか急に言い出してな?ほんで折角だから東京見物でも行ってこいーて」
敷島は満面の笑みを浮かべながら答えた。
「…そうか…痛いぞリージュ?」
素っ気ない返事を返す布津に、不服を顔に浮かべながらリージュが布津の頬をつねる。
「んで?その子どうしたん?」
対する敷島は疑問符を顔に浮かべながら問う。
ハタ、と気付き、
「まさか…隠しg…」
「断じて違う」
間髪入れずに布津が遮る。
「まだ全部言うとらんのに…」
せっかちやなぁ、と敷島が口を尖らす。
ぶーぶー、とリージュも背中で口を尖らせていた。
「…この子は迷子だ。ただ少し訳ありでな。アジトへ連れていく」
声のトーンを落としながら耳打ちをした。
「なんや、ヤバい話?」
「まぁ…ほうだな」
顔をつねられ過ぎて布津の顔が変形を始めていたが、構わず続ける。
「休暇ひゃらこの辺りは避けたひょうがひひ。しゃわがしくなりそうひゃからひゃ」
「はやくこのおねーしゃんにわたちをしょーかいしなしゃい!」
大層不服そうにリージュが布津をつねりながら語気を荒げる。