そして正体
「馬鹿なことを。そもそも信用なぞしようも…」
「ま、いいわ」
リージュが布津の背中から飛び降りる。
「そろそろまりょくもねりおわった、かたならしにはじゅーぶん」
トコトコと、黒服達の前に進み出る。
(まりょく…魔力?)
布津はリージュを制止するのも忘れ、進み出るその背中を訝しげに見やる。
「ここはせまいから、ちょうせつがひつようね」
ス…と半身に構え、右手を黒服達に向ける。
その間にも、黒服達が近付く。
「リージュ!逃げろ!」
やっと我に帰った布津が叫ぶ。
その瞬間。
「やきつくせ」
ゴォォォォォォォォオ!!
凄まじい熱量の炎が何もない空間から発生する。
炎は黒服達だけを包む。
「!!!!????」
突然の事に、布津が驚愕の表情を浮かべる。
声を上げることもなく崩れ落ちていく黒服を見飽きると、リージュはクルリと布津に向き直る。
「どうかちら?」
炎に照らされたリージュ。その瞳は爛々と輝いていた。
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タッタッタッ…
布津はリージュを背負い駆けていた。
(まさか、魔女などと…)
リージュが黒服達を焼き付くしたあと、騒ぎになるのを懸念した布津はすぐ離脱する事を選択した。
『あたちはまじょ、リージュ。あのほのおがしょうこ。でもこのちからはあなたにむけるつもりないわ。ええと』
『…布津、純能介だ』
布津は少し逡巡したが、答えた。
『じゅんのすけ…』
『人が来る。離脱するぞ』
『あい』
リージュは差しのべられた手をスルーすると、布津の背後に回り込む。
『んしょ、んしょ』
布津の背中に上る。
『みじかいあいだとおもうけど、よろちくね』
布津は苦笑いをすると歩きだす。
『あれ?ほっといていいの?』
背中でリージュが声をあげる。
見ると、先程倒した男が転がっていた。
『放っておけばいい、ただの盗人だ』
直ぐに警察が来る、と呟くと歩き出す。
『??』
聞き慣れない言葉にリージュが?を顔に浮かべたが、急に布津が走り出した為に慌ててしがみつく。