お約束
「…はふぅ」
リージュがため息を吐く。
「だからぁ、ただのまいごなのっ」
一向に警戒心を解かない布津に怒鳴る。
「信用できんな」
(…強情な男ね)
リージュは内心舌打ちをする。
(この路地から出てないからわからない部分は多いけど、私のいた世界とは明らかに文化、文明が違う。…さっきの発言は失言だったわね)
「じゃあ、どうしたらしんようしてくれるのかちら?」
「…何?」
「いくあてがなくて、こまっているのもほんと」
「………」
布津の視線が泳ぐ。
(私の予想だと、この男は密偵か何か。そしてこの状況。そろそろね)
リージュがニヤリとする。
ザザザザザザザ…
遠くから数人の足音が響く。
「!?」
「おやくそく」
布津が焦る。
リージュは満足そうに呟く。
やがて、サングラスを掛けた黒服の男達が姿を表した。
「チィ、またあいつらか」
布津が忌々しげに呟く。
「やだ、こわーい」
リージュが布津の足にしがみつく。
「お、おいっ」
その間にも、黒服がジリジリと近付いていく。
「くっ…」
布津が後ずさる。
「んしょ、んしょ」
張り詰めた空気の中、リージュだけはマイペースだった。布津の体を上っていき、
「おい何を」
「よいしょっと」
布津の背中にしがみつく。丁度おんぶをしているような格好だ。
「もしあいつらをけちらせたら、あたちをしんようしてくれる?」
「なんだと?」
耳元で囁くリージュに、布津は訝しげな視線を向ける。
「どうなの?それとも、このままつかまっちゃう?」
リージュが楽しげに問う。