幼女の名は
「…大丈夫か」
布津がへたり込んでいる幼女に手を差しのべる。
「…んもぅ、もっとスマートにたすけられなかったんでちか」
幼女がブツブツ言いながら手を伸ばす。
布津はその小さな手を掴むと、ゆっくりと立たせる。
「っと、たすけてくれたことにはかんしゃちてるわ。ありがとう」
その物言いに布津は苦笑いをする。
「随分大人びた子だな。名前は?」
その問いに幼女が胸を張る。
「リージュよ、よろちくね」
そう言うとリージュは白く長い髪をかきあげた。
「……」
「……なんでだまるのかちら?」
「いや、その歳頃で色気醸し出そうとしてもな」
「むーっ」
リージュが頬を膨らませむくれる。
「…近くまで送ろう。家はどこだ?」
無視された事にリージュはまだむくれていたが、やがて口を開く。
「ちかくにはないでち」
「海外から来たのか?その割には日本語が上手いな?」
「????」
リージュが顔に?を浮かべる。
「今日日本に来たのか?親はどこにいるか分かるか?」
「りょうしんはちにまちた」
「…済まなかった」
「いえ、もうなんねんもまえなの」
「そうか…」
物心付く前に、という奴かと布津は呟く。
「それで、今はどこに宿を取っているんだ?それと保護者は?」
気を取り直すと布津は問う。
「まだきめてないでち。あたちひとりできたばかりなもので」
「????」
今度は布津が顔に?を浮かべる番だった。
(こんな小さな子供一人で渡航できるものなのか?)
「あっ」
そうだ、とリージュが手を叩く。
「おにいさんのところにごやっかいになります」
…( ゜д゜)ポカーン
唐突な物言いに、布津の思考が止まる。
「ちょっと待て、それは」
「さっきの」
明らかに先程までとは違う声色に、布津がドキリとした。
「くうかんてんいのいっしゅ?なかなかおもしろいわね」
リージュの目付きが鋭くなる。
(この子供…只者ではない…まさか!)
ザザザッ!!
布津が大きく後方へ飛ぶ。
「何者だ」
構えを取り、警戒心を露にした。
「そんなにこわがらなくてもだいじょうぶ、あたちはただの…」
リージュそこまで言うと、顎に手を当てる。
「…ただのまいごでち」
「只の迷子にしては随分と聡明なようだが?」
布津は構えも警戒も解かない。