遭遇
一人の男が全力で走っている。
「ハァ、ハァッ…何なんだアイツはよぉ!」
男は走りながら悪態を吐く。
チラ、と後方を窺うと、先程から自分を追ってきていた人影が変わらない速度で走っているのが見えた。
男は狭い路地へと駆け込む。
「ここなら撒けるかも知れねぇ…」
だが、男の読みは甘かった。自分を追う人影が速力を上げたのだ。
「ゲッ!?」
男も無理矢理足を速める。だがしばらく前から走り詰めで、そう長くは持たないことも分かっていた。
(やべぇ…追い付かれる…)
観念しそうになりつつも、足は止めない。
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ぶつぶつ…
幼女は何事か呟きながら路地を歩いていた。
「…………で、だからぁ…」
トコトコと、顎に手を当てながら歩みを進める。
そんな時だった。
ダダダダダダダ…
何処からか、誰かが駆ける音。
「…?」
幼女はハタ、と足を止め周囲を見回す。
見ると、路地の向こう側から必死の形相をしながら全力疾走で走ってくる、人相の悪い男が居た。更に後方からもう一人の男。こちらは金髪を揺らしながら表情ひとつ変えずに走っている。
「あら…なにかちら?」
幼女は特に気にする風でもなくひとりごちる。
走ってくる男達を眺めていると、こちらに近付いてきた。