第七部
(いよいよ後二つかぁ……)
ソファに座りながら俺は盛大に溜息をつく。この仕草も何回目だろうかーー
「なんかお盆休みに幽霊って笑えねぇよな」
誰もいない部屋でそう呟くが当たり前のように返してくれる人はいない。
たった今メリーさんから来た電話では、メリーさんは俺の家から二つ目の駅にいるという。一つ目の駅というのは普通に考えればこのマンションの最寄駅になるため実質電話が掛かってくるのは多くて後二、三回だろう。
何故逃げないか、と聞かれるかもしれない。
俺も逃げようとは考えた。しかしながらwikiでは「追ってくる」と書いてあったし、何より対処法がないのが大きい。
そもそもメリーさんは結末がない怪談としても有名であることを知っているだろうか。アレンジされた話を合わせても大抵は「今あなたの後ろにいるの」というようなメリーさんの電話で終わっている。
これが何を意味するかは至って単純、主人公がこの後どうなったかが誰にもーーメリーさんでもない限りーー分からないということだ。
多くの人は「捨てられた人形が復讐をしにくる」なんて解釈をするが、俺は……
ーープルルルル、プルルルル
「……はぁ、また来たか」
もうここまでくるといっそ取ってやろうじゃないかなんて気持ちになる。
放置していても勝手に繋がってくれるお陰で机の上に置きっぱなしだったスマートフォンを手に取り、緑色の丸いボタンをプッシュ。
「もしもしメリーさん、今どこ?」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションから一番近い駅にいるの」
ーーガチャリッ!
まるで友人に話しかけるように喋ってみたがメリーさんの話し方は何も変わらなかった。
「一番近い駅てーと、〇〇駅だよな。歩いて三分弱ってところか」
(にしても他県から電車でこのスピード、電話を一駅ずつ掛けてきてる……。か、各駅停車なのかな?)
今は夕方。朝九時ごろからこの調子な為その考えが妥当だろう。そうすると「メリーさん」にも意外とお茶目一面があるのかもしれない。
そんな馬鹿なこと考えていると少しは気が楽になった気がした。
それから十分後。ポテチを貪っていたところに着信音が鳴り出す。
ーープルルルル、プルルルル
「お、来たな?」
ついこの間腰の悪い婆ちゃんと駅まで歩いて三分弱だったが、「メリーさん」は足が遅いのか……?
ポテチの油が付かぬように小指でスマートフォンを操作する。ついでにスピーカーフォンにも。
「もひもひメリーふぁん?」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの前にいるの」
『ガチャリッ!』
なんとなしに電話が切れる音を口に出してみる。
「さて、と。俺もちょっくら準備しますかね」
俺はせめてもの対策のつもりで台所へと向かった。
話切れ切れで分かんないよっ! て方は是非とも最初から読み直してください。
そのうちまとめたのを気分で投稿するかもしれませんが。