第四部
「本当、どこにいったんだろう?」
少女は玩具箱に今しがた出した玩具を仕舞いながら呟く。
「もし私が持ってなかったらお母さんかお父さんが絶対何か言ってくれてたと思うんだけど…… 。まあ明日にでも聞けばいいかな。邪魔しちゃ悪いし」
今思えば無くなったのって確か酷い風邪引いてた時くらいだっけ、一通り探していた玩具箱を片して部屋を出て行く少女。
階段をぱだぱたと降りた少女を待ち受けていたのは、着信音。
プルルルル、プルルルルーー
「ふぇ、またメリーさんかなぁ……。もっと近づいてたりしたらやなんだけど」
朝昼夕と変わらない着信音が一層の不気味さを感じさせる。
「取らなくても、いいよね? なんか怖いし」
プルルルル、プルルルルーー
誰に向けてのいいよね? なのかは分からない、が、着信音は一向に止まなかった。
家電話の前に棒立ちになる少女はいよいよ本格的な恐怖を抱くことになる。
「……な、なんでずっと鳴ってるの?」
ーープルルルル、プルルルル
バクンバクンと、少女の鼓動が早まって行く。着信音の音以外響かない家の中で脈動音はやけに大きく聞こえた。
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
「ひぃっ! やだ、怖いよ……!」
じりじりと後退りをする少女。その顔は真っ青でーー
ーープルルルル、プルルルル
しかし無情にも着信音は鳴り続ける。誰もいない家の中、少女に対して取れ、早く電話を取れと、そう命令するように着信音は鳴り続ける。
「い、一回取ってすぐ戻せば……。それだけすれば切れるかも……!」
最早涙目で少女は恐る恐る電話へと近づく。
ーープルルルル、プルルルル
少女は冷たい受話器に手を触れ、すぅーっと息を吐いた。
ーープルルルル、プルルルル
それから硬く握り締めてーー僅かに受話器を上げ、また戻す。
ガチャ!
一際大きな電子音がリビングに鳴り響き、着信音は止まった。ビクリと身体を震わせた少女はへたへたと座り込みながら口を開く。
「やっ、やった「もしもし、私メリーさん。今大きな交差点にいるの」
ーーガチャリ!