表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編: メリーさんの電話  作者: くゆ
メリーさんの電話 細ver
2/18

第二部

「んーっ! やっぱ勉強は疲れるなぁ……。でもテストも近いし頑張らなきゃ」


謎の電話から約三時間後、ひと段落ついたのか少女は思いっきり伸びをしながら嘆息した。

そして机から椅子を引き、くるくると回り始める。



「ってもう十二時? 意外とやってたんだなぁ、私。……お腹も空いたしお昼にしようかな」


壁にかかった時計を回転しながら確認した少女は徐々に緩やかになっていく椅子に身を預け、速度が緩やかになったところで立ち上がる。


またもや気持ちよさそうに伸びをした少女のお腹がきゅるるる、と鳴った。

若干赤面した少女はまたもやぴょんぴょん跳ねながら階段を降りるのだった。




台所でエプロンを身に付けふんす!と気合を入れるのは頭も手拭いで包んだ少女。

目の前には鍋やらフライパンが積み重なっており、少女の様子と合わせて見る限り恐らく料理は手馴れていないのだろう。


ただそれでも必死にネットでレシピを調べ、冷蔵庫の中身を確認する少女はある種の可愛らしさを感じさせてくれる。


やがてつくるものが決まったのか、少女は人参やピーマンなどを冷蔵庫から取り出し始めた。

これ又慌てて取り出したボウルの中に全て一緒に突っ込み、じゃばー!と水をかけて揉みくちゃにしていく。


少女的には頑張って洗っているつもりなのだろうが何故か野菜が後方に跳ねていく上洗っている野菜は殆ど洗う必要がないもの。

それに気付かず続ける事約五分ーー


少女は一部原型を留めていない野菜を見て「ま、まあ切らないてよくなったってことでいいよね……」などと呟きボウルの中身をまな板にぶちまける。


だがボウルに入っているのは野菜と水であり、そんな事をすれば水も出てしまい、案の定キッチンの床は水浸しである。

それを意にも介せず少女は包丁を手に取った。



きっと少女には野菜しか見えていないのだろう。色々な野菜がごちゃ混ぜになっている状態のまな板に、両手持ちの包丁を叩きつけ始めた。

人参は持ち前の形で振り下ろされる刃を往なし、ピーマンは両断された上でその身を空中に踊らせる。


いずれもいずれも全てが失敗に終わり、それでも少女は諦めない。

例え調味料の蓋が開いてしまって中身が飛び出てしまっても、隠し味と言いながら間違えてメロンを入れてしまっても。


紆余曲折の末、遂に鍋へ具材諸共全てをぶち込んだ少女は溜息をつく。


「初めてにしては上手く言ったんじゃないかな?」



台所は大惨事としか言い表せないくらい混沌(カオス) な有様になってしまっている。

どこをどう見て成功と言えばいいのか理解しがたいがそこはこの際放っておこう。


「うん、あと十五分くらい煮込めば美味しい野菜スープになるって書いてあるね。ふふっ楽しみだなぁ♪」


そんな事を言いながら手拭いやエプロンを脱いでいく少女はポケットにしまってあったスマートフォンに触れーー



ーープルルルル、プルルルル。



「ひゃうっ!? ……ってまた電話かぁ」


いかにも女の子らしい悲鳴をあげた少女は安心したようにほっと息をつき、台所の横のパソコン、の更に横へと向かう。


(う〜っ、つい昨日怖い話をテレビで見ちゃったから一人って怖いんだよね……)


いつも仲の良い少女の両親は其れだけにお出掛け、もといデートをする事が多い。家ですらもいちゃいちゃする、少女はそんな両親がとても好きだった。逆に両親の方も少女のことをお互いの愛の結晶だと深く愛していたし、デートへ連れて行く事も多々ある。


そんな両親だが、今日は一泊二日の結婚16年目旅行!に出掛けているため少女は家に一人なのだ。


それ故少女はいつも以上にそういうこと(・・・・・・)に対して敏感になってしまっているのである。



ーープルルルル、プルルルル

早く取れと催促するように、無機質で冷たい音を響かせる受話器。


「はいはーい」


果たしてダレからの電話なのか。またイタズラ電話だったらやだなー、なんて思いながら受話器を耳にあてた少女だったがその考えは見事的中することとなる。


偶然かどうかは少女の知る由もないが、少女が受話器を耳に当てた瞬間を見ていたように聞こえてきたのはーー朝と同じ声。


「もしもし、私メリーさん。今お洋服屋さんにいるの」


ーーガチャリ!



ツー、ツー

虚しく聞こえてくる電子音に少女は何も言い返せず、ただその電話を、そのメッセージを受け取ることしか出来なかった。


「またあの子だぁ……。今度はお洋服屋さんって駅前のところだとすると、朝よりも私の家に近づいてる? うぅ、ちょっと怖いかも……」


のろのろと受話器を戻す少女は身震いしながらパソコン前の椅子に座った。自室の椅子と同じように回るような仕組みになっているその椅子も回しながらーー


(メリー、って何処かで聞いた事がある気がする。なんだっけ……?)


【メリーさん】について考え始める。


くるくる、くるくる。くるくる、くるくる、くるくる、くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるーー


「……うっ、ちょっと気持ち悪い」


自らの行動の結果吐き気を催した少女の頭には、幼い頃少女が遊んだ西洋人形が浮かんでいた。

ツイッターもどうぞ

https://mobile.twitter.com/home


ブクマ七件、ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ