第十三部
「今、何時だろう?」
窓から差し込む光は「あの日」の夕方と同じ、燃えるようなオレンジ色だった。
机の上に置いてあるスマートフォンを手に取った少女は電源ボタンを押し時刻を確認しようと
ーープルルルル、プルルルル
「ッ!!!!」
病室に響いた着信音。黒電話を模したような一昔前のそれは、少女の病み上がりの身体を痛いくらい震わせた。
ーープルルルル、プルルルル
「ま、た……」
絶句、正にその様子がぴったり当てはまる少女は思考する。
ーープルルルル、プルルルル
(……あれ、私何で生きてるんだろう。襲うつもりなら倒れた時に襲えば良かったんじゃ)
ーープルルルル、プルルルル
(打った頭以外痛いところない……)
ーープルルルル、プルルルル
(もしかして、もしかしてだけど……)
ーープルルルル、プルルルル
「襲うのが目的じゃなかった?」
ーープルルルル、プルルルル
(……怖い。けど、メリーさんが私に逢いたいっていうなら、とらなきゃ。話さなきゃ……!)
ーープルルルル、プルルルル
少女は震える手でスマートフォンを操作し、ゆっくりと耳に当てた。
「もしもし、私メリーさん。今、扉の前に居るの」
ゾクッ! 携帯を取り落とした少女の背筋に悪寒が走る。扉を見た少女の目に涙が溜まる。
その涙は扉が段々開いていくのを確認するとさらに増えていった。
スーっと横に開いた扉から出て来たのはーー
一人の男だった。
「……ぇ?」