第十一部
「この病院で間違い無いんだな?」
俺は右手の重みを感じながら隣に立つ「メリーさん」に話しかけた。
マンションから駅を乗り継いで約二時間程かかった病室の前に俺はいた。「メリーさん」曰く、この目の前の白い建物で「少女」が入院しているらしい。
「多分……」
なんでも「少女」の意識を刈り取ったのはメリーさんで、メリーさんが返すまで「少女」は一生目を覚まさないという。
「そもそもなんでそんな事をしたんだ?」
「……物語が狂っちゃうから。廻談には要らない登場人物以外が関わっちゃいけないの」
「その理論でいくと俺もアウトな筈なんだが」
「もう狂ってる物語をこれ以上狂わせないためのおにーさんだからだいじょぶ」
成る程。解決策、ではなく対策なのか。それにしてもーー
「お前を持ったままなのは何とかならないのか……。大の大人が人形片手になんて笑えないぞ」
右手に持っているメリーさんを見ながら呟く。
「うぅ、ごめんね? でもそれがないと、っていうかそれが本体だから……」
隣から申し訳なさそうな謝罪の声が聞こえる。
これはメリーさんの本体、つまり人形だ。隣にいる人間のような「メリーさん」は所謂霊体であり、俺(強い霊感のある人間)にしか見えない。あくまで人形の意思がこうして具現化しただけな為に本体は常に持ち歩かなければいけないという。
ならばどうやって俺のマンションまで来たのかという話だが、少しならば人形を動かせることができ人の荷物に紛れて電車を乗り降りしていたと言っていた。
「まああと少しの辛抱か。じゃあ行くぞ」
「うん!」