第一部
こんにちは、こんばんは。
お暇な時の暇潰しとして読んで頂いけると幸いです。
毎日投稿、短めですが二週間と少しお付き合いください。
ーープルルルル、プルルルル
今年春に買い換えたばかりのスマートフォンが振動し、着信を伝える。
ある事からリビングのちゃぶ台に置きっぱなしのそれは暫くの間の震え続け、やがてガチャ!という古臭い音を発した。
ーー俺は一度も触れていないのに、だ。
通話が始まった事を音で示すスマートフォン。
勝手に通話を繋げたその四角い電子機器からは僅かなノイズと、可愛らしい女の子の声がーー
「もしもし、私メリーさん。 今、貴方のマンションから二つ目の駅にいるの」
◆
貴方は「メリーさんの電話」という怪談を聞いたことがあるだろうかーー
日本人なら誰もが一度はその話に耳を傾け、恐怖に身を震わせたものだと思う。
話自体は至ってシンプルな内容であり、それ故に地の底から湧き上がるような本能的な悪寒を抱く、そんな怪談。
◆
「もしもし、私メリーさん。今〇〇駅にいるの」
ある休日の朝、たまたま両親が出掛けていた為にお留守番をしていた少女の元へ一本の電話が掛かる。
二階にある自室で勉強机に向かっていた少女は階下から鳴る家電話の着信音に気付き、慌てて階段を下っていった。
リビングに置かれた父親のパソコンの隣にある家電話を取って耳に当てた少女。
「はい」と言いながら耳を澄ますとーーザザザザ! と今時珍しいノイズと共に、聞いたことのない女の子の声が聞こえてきた。
(誰だろう……?)
一人っ子である少女に電話を掛けてくる女の子など友人以外には居ないはず。
少女は首を傾げながら相手が喋るのを待つ。
「もしもしーー」
鈴の転がした時の音をそのまま声にしたような可愛い声。少女は僅かに驚きつつもやはりこんな声は聞いたことがないな、と疑問に思う。
(取り敢えずは名前を聞こうかな)
そう思った少女は、電話のお決まり、つまりもしもしと返そうとしたのだがーー
「もしも
「私メリーさん。今〇〇駅にいるの」
ガチャリッ!
少女の挨拶は容赦なく遮られ、感情を感じさせない声で一方的に何かを告げられる。
「ぇ……?」
先程よりも強い驚きを受けた少女に聞こえるのはツー、ツーという電話が切られた事を示す音だけ。
受話器を元に戻しながら少女のはイタズラ電話だった、と判断を下し勉強に戻ることにした。
(お母さんもこないだイタズラ電話が多くて困る〜〜って言ってたっけ。まああまり気にしなくていいのかな?)
ぴょんぴょん! と階段を飛び跳ねながら少女は自室へと入った。
しかしその歩みは部屋の中央で止まる。
「〇〇駅ってよくA子ちゃんとかと遊びに行くところだよね? ……さっきの子、なんでそんな事言ってきたんだろう」
急に浮かび上がってきたギモンと、寒気ーー
ぶるるっと身体を震わせた少女は、改めて勉強机に座ったのだった。
毎日投稿です。
是非ブクマ、評価してやってください。
感想頂いたら泣いて喜びます。